えんじゅ:148号

中学3年 奈良修学旅行
10月11日〜14日

 中学校生活の総決算である奈 良修学旅行が無事終了した。現 地集合、班別行動も当たり前の ようにこなし、アクシデントが あっても、連絡を取りながら対 処する。3年間の実践の成果を 実感した4日問であった。

奈良の空気   3−3  縣

 奈良研修の中で最も印象が強 かった場所は浄瑠璃寺 である。それは別名、九 体寺ともいうこの寺を 見るのを楽しみにして いたせいもあるし、研 修中でトラブルが一番 多かったからでもある。

 2日目の朝、一番に 浄瑠璃寺へ向かった。 行程表通りに乗ったバスは浄瑠 璃寺まで3kmの標識がある場所 で止まった。私達は腕時計とに らめっこしながら途方にくれる 間もなく歩き始めた。周りに畑 や林のある道は眺めがよかった けれど、きつい坂道だった。トラ クターにのったおじさんの道案 内などに助けられながら、私達 は行程表では5分のはずの道を 40分かけて、へとへとになっ て歩いたのだった。

 そんな場所がら、 浄瑠璃寺の境内は人 気がなく涼しかった。 私達の班の研究テー マは文学だったため、 仏像に関する予備知 識はないに等しかっ たが、九体仏には、ただ呆然とし た。元来、参拝するために造られ たお堂ではないらしく、建物い っばいに金色に輝く仏像が並び、 私達を圧倒した。私は畳に座り、 しばし仏像 を見つめて いた。やが て帰る時刻 となったが、 バスの時刻 表は9月1 5日付で変 更され、何 とあと1時間は来な い。が、結局開き直っ た私達は、行きの手違 いのせいで短くなった 分を取り戻すべく、そ の1時間をのんびり境 内で過ごすことにした。 私は外で何もせずにい ることは30分もないといって いい。しかし浄瑠璃寺では1時 間、特に何もせず、ぶらぶらと過 ごした。この後の2日間は法隆 寺など有名な寺を巡ったが、私 の記憶の中では、この浄瑠璃寺 が最も奈良のイメージと重なっ ている。行程表の狂いによって 生じた1時間。この時間に私は、 奈良の古から止まったままの時 間を感じた。

吉野での紙すき体験   3−3  桑原

 奈良といえば寺。しかし今回 の奈良研修、私は寺院巡りの行 程の中に、あえて体験学習の日 を1日入れた。奈良を様々な視 点から見てみたかったからだ。

 吉野での 紙すき…こ れが私の選 んだ体験学 習だ。もち ろん紙すき なんて初め ての体験で、 不安は大きかったし、現地の 人々と直接ふれ合う数少ない機 会だったので、私は緊張してい た。しかしそんな私の心 配をよそに現地の方々は 皆、非常に気さくで、私 達にとても良くして下さ った。紙の作り方だけで なく、紙すきを次の世代 へ伝えていく事の大切さ も話して下さった。

 体験学習を終えた私達 は、職業としての紙すきを 見学した。そこで見たおば あさんの後ろ姿に何か深い ものを感じた。幾度も幾度 も同じ作業を繰り返す。幾 度も幾度も、毎日毎日。普 段めまぐるしい変化の中で 生活している私には、「ず っと変わらないもの」が果 てしなく大きく感じられた。 長い間、積み重なって出来 るものが「伝統」と呼ばれ るのだろうと思った。

 古都・奈良であるはずなの に、古いものばかり見たはず なのに、奈良には常に新鮮な 感動があった。それは、私の 日常生活の中に「伝統」と感 じられるものが、あまり無い からだと思う。私達は、新し いものの良さはよく知ってい る。しかし、古いものの良さ をあまりに知らなさすぎる。 私は紙すきの体験を通してこ の事を知る事ができた。

 また、古い歴史に触れる事 によって、ただただ自分が生 きてきた時間の短さ、自分の 卜存在のあっけなさを感じた。

 本当にたくさんの事を吸収 した奈良研修であったと思 う。


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平成13年(2001)12月 3日改訂