えんじゅ:157号
![]() 天候に恵まれた中、高1は広島研修を実施した。新しくできた平和祈念館を始め、平和記念資料館などの原爆の爪痕を見て、語り部の 話を聞き、広島の空気に触れることで、戦争を少しでも実感できただろうか。
広島は、一見何の変哲もない普通の街であったが、それでもやはり平和記念公園の中だけは特別な空気に包まれていた。 とても穏やかな空気だった。広島の持つ深い傷跡が、怒りや憎しみではなく、自然な形の優しさとして確かに存在していたように思う。 広島と、そこに生きた人々の生き様とでも言おうか、私はここを包む静かだけれど重い空気を感じ、そして考えさせられた。 57年前、この場所でどれほどの人がどんな思いで命を落としていったのか。そしてその上に私達は立っている。 正直少しぞっとした。原爆ドームのぐにゃりと折れ曲がった鉄鋼を見た時は、どこか別の歪んだ世界から飛び出したもののように感じた。 でもそれが戦争の現実なのだろう。
平和な時代に生きる私達は、戦争をこの目で見ることはできず、その恐怖をほんとうに解ることはできないと思う。しかし、これからの平和を 築いていくのは私達なのだ。私はここに来て世界の平和を心底願ったし、未来へ繋げてゆくべき平和への第一歩はこの場所にあると思った。 平和公園にある1つ1つの碑や塔が平和を創り出せるわけでは決してない。けれども広島が生んだ願いや祈り、それぞれの碑に込められた人々の思い、 そしてこの場所を包む空気は、世代も国境も越えて通じていくことができるのだと思った。それは生きていく中で、一度は見ておくべきものであり、 忘れてはならないものだと思う。もし、世界中のすべての人がここを訪れることができたなら、この空気を感じることができたなら、世界ももっと平和になれるのではないか、そんな気さえした。
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![]() 中2は秋晴れの木曽路を満喫しました。例年より活動範囲を狭めての研修でしたが、移動が少ない分、体験学習が充実するという利点もありました。 また、全員が馬篭・妻篭間の旧中山道ハイキングを経験し、旅の気分を楽しみました。幕張とは違う自然や歴史を前に、新たな発見が得られたようです。
二日目に木曽路を歩いたとき、花が多いことに気づいた。行く前から「自然が多い」とは聞いていたのだけれど、あれだけたくさんの種類の 花があるとは思っていなかった。 ほとんどは名前も知らない花ばかりで、私が知っているのはコスモスくらいだった。みんな必死に土にへばりついて、精いっぱい 生きているように見えた。花屋や花壇で人間に甘やかされている花とはまた違ったきれいさがあると思った。 温室育ちの花が醜いわけではないけれど、飾りたてた美しさは自然の美しさには勝てないんだと思う。
![]() 木曽では人間と花が一緒に生きているみたいだった。道を歩けばいつも花があったし、宿や店の前にもいろんな花が咲いていた。 枯れてしまった花とでさえも、木曽の人たちはうまく付き合っていた。たとえば草木染めがそうだ。枯れかけた花で染めた布は、 人の手では作り出せない不思議な色になった。 私はそういう生活のしかたをとてもかっこいいと思った。お店が近くになかったり、携帯がつながらなかったり、 不便な所もたくさんあった。でも、そのかわりに「本当の豊かさ」を教えてもらった気がする。 都会のコンクリートジャングルを抜け出して、きれいな花と一緒にのんびり生きる。 そんな生活もいいかもしれない。 | ||||||||||||
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好天に恵まれて全日程を終了。初日は学級別の企画にて現地へ向かう。鋸山登山(1・3組)、 内浦山県民の森(2・8組)、清和県民の森(4・7組)、鵜原海岸(5・6組)と散った。 二日目をゼミ別研修として中核に据えたが、内容は次の通り。
内浦山県民の森を目指して走るバス−2日目のゼミ別行動の真最中である。私達のテーマは動植物の研究で、その最初がこの山。 ここは日本で唯一山ビルが生息することで有名であったが、今では他に生息地が増えてその名声は影を薄めた。 バスのエンジン音が止まり、静かに外に降りる。清新な気を一口吸う。ふと室生犀星の『玲瓏たるものに激しく打たれている』という 詩の一部を思い出した。澄清な朝の、静けさの中。 生きている山。陰陽がくっきりと分かれ、深く息づく。深緑の中にはすでに赤い色が鏤められ始めていた。 友達はポロリと「綺麗だね。」という。黙ってこっくりと頷いた。 山の中を歩き始めるとすぐに、細い道に挟まれた小さな川の流れ。透明な水が青空の零した木漏れ日を受けて光彩を放っていた。 時折岩や草の葉に砕けては、小さな音をたてながら下へ下へと流れていく。川はまさに生きていて、手をそっと水に入れると、 精気が伝わってきた。 ハプニングが起きた。この活動も終盤というところで、楢原先生を見失った。逸れてしまったのだ。 私達は歩き続けた。荒れ道はなかなか進まず、迫り来る集合時間に焦る。暫くして先頭が走り始める。 やっと人道が見えた。
筆者中央 初の研修。見て聞き考え、友達と一緒に感動した3日間で何を学んだのか。人それぞれであろうが、社会のマナーや地方の伝統を知り、 自然の中では皆が素直になって新たな友情を芽生えさせられたのではないか。 心を豊かにする思い出。思い出こそが心の故郷だ。私の心にあの風景が伝わってくる。そんな時頻りに思う。 大切に…、と。
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平成14年(2002)11月27日改訂