えんじゅ:161号校長先生講話 |
|
|---|---|
「自調自考」を考える(そのCLV)幕張高等学校・附属中学校校長田 村 哲 夫 |
![]() |
|
3月、21世紀3年目の今、 渋谷教育学園幕張高等学校第1 8期生が卒業。2月には創立2 0周年記念式典が遂行された。 21世紀に活躍する人材の 育成を目指して、1983年、 昭和58年に開 校された「自調自 考」の幕張高等学 校が、人が成人と なる期間である2 0年という歳月を 閲したということ に創立者として感 慨深いものがある。 この20年の「価 値ある活動」に対 し関係者に心から 敬意を表したい。 年を以て巨人としたり歩み去る 虚子 ところで、今21世紀を迎 え、目紛(めまぐ)るしく変化していく時代 に「教育をどう考えるか」につい て、文部科学省中央教育審議会 (筆者も委員)で議論をすすめて いる。大学改革、教育基本法見 直し等々である。 2025年、日本は高校生240 人(現在480万人) となり、教育基本法制定当時 (昭和22年)65歳以上の 老人の全人口に占める比率が 5%であったのが現在36%、そ して世界に他例を見ない急速な 高齢化社会を迎えようとしてい る。そこで次代に生きる人たちの 教育をどうしたらよいかという大 きなテーマが問われてきた。 特殊合計出生率の低下と高齢 社会の現出、人口減といった現 象はマイナスと考えられるが、歴 史上ではルネッサンス期におきて いる。この世界史上、現代に至 るまでの近代社会への転換期と 位置づけられる偉大な時代は、 地中海を舞台としたイスラム世界 とキリスト世界という異なる文化 の接触、鬩(せめ)ぎ合いのなかで社会 の抜本的変革を必要としていた、 人口減、高齢化のイタリアで生 まれたのである。 文化とはレヴィ・ストロース によれば、言語、技術、社会的 組織、慣習、宗教的信条の組み 合わせによって出来ている。教育 が次代に伝達し適応させることを 目標の1つとしている「文化」 そのものが、今変わろうとしてい るのである。然し、ルネッサンス 期に制度として確立してきた「大 学」ポローニャ大学が、(1)神学、 (2)法学、(3)医学、(4)教育の4部 門ではじめられたことで判るよう に、こうした時期こそ教育を考え ることが人間にとってまことに重 要なのである。 そこで、21世紀のキーワ ード「自調白考」の幕張生諸君 に、これから最も重要な考え方と して「人間の尊重」(respected as individuals 憲法第13条)と 「人間の尊厳」(individual dignity 憲法第24条)の関係につい て意識することを求めたい。抑々(そもそも)、 個人人格の尊厳は近代民主主義 思想の根底をなすものであって、 そこから個人の尊重が確立されて いくのである。「人格」概念は、 古代後期のペルソナ概念に由来 すると考えられるが、人格が尊厳 を持つものと考えることは、「誰 か」という問いにかかわるもの で、当然「自立した主体性=自 律性」が基礎になければならな い。自分が「自己の生の作成 者」=自己理解と他者とのつな がりの意義=という人格的自律 権を意識することが個人の尊厳 の根幹であり、その上に個人の尊 重が続いてある。個人の尊重が 先にあるのではないのだ。(この 項続く)
| |
![]() ![]() |
|
| えんじゅ表紙へ | |
![]() |
|
平成15年(2003) 4月 8日改訂