えんじゅ:163号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCLX)


幕張高等学校・附属中学校校長

田 村 哲 夫


 平成15年、2003年、21世紀を迎えて3年目。1学期、スポーツフェスティバル、メモリアルコンサート (高等部)そして中学1年生の野田研修、中学2年の鎌倉研修等々、多くの行事が実り多く実施された。

 6月は、1年中最も昼が長いが、暗い印象が残るのはBAIU(梅雨)のせいである。

 世界に通用する学術用語である梅雨は、暗さと同時に私達に地球平均雨量の2倍の降雨を齎(もたら)してくれている。 国土の70%以上が人を爽快にする森林であるのも、又梅雨晴れの素晴らしい青空を知るのもこの長雨のせいである。 自然はいろいろなことを教えてくれる。そして自然は人間に時の移ろいを教えてくれる。『大発見』(ダニエル・ ブアスティン(米))によれば、人類にとっての最初の大発見は「時間」、すなわち過去と未来を視野におさめることで あった。

 「時間」を知ることで、人は自然の単調な循環、移ろいの単調さから逃れることが出来、地球上を移動する人間にとっ て、動きを計る有効な手段を手にすることになった。つまり「時間」の発見によって、空間も意識下におかれ、時間、 空間は連続した次元となる。ここから人間の文化、文明は始まった。

 ナイルの水位が暦をつくったと云われるが、素朴な最初の時間計測の尺度は「月」であった。英語の「ムーン」は、計測 を意味する言葉(me)に起源を発しており、ギリシャ語のメトロン、英語のメーター、メジャーも同じ語源である。 古代ゲルマン人の社会では、集会が開かれるのは、新月か満月の時だった。(タキトゥス・ゲルマニァ)という。月の相が 世界のどこでも見られるわかりやすい周期をもっているが故に、時間の尺度として最初利用される。=太陰暦(タイインレキ)= 然し、月は、季節の暦として必要な雨や雪を予報し、気温の寒暖を予測し、種播きの時期、初霜、大雨等々の予測の必要性 にほとんど応えてはくれないことに気づく。

 太陽年−季節が一巡する日数をきちんと測定したもの−は365日と4分の1になる。

 この太陽の循環周期と、月の循環周期の違いは、人間をして天空について学ぶ意欲を育て、その為数学者が生まれたと云 われている。

 日本では、6月10日を時の記念日としている。天智天皇が、水時計を作り、時の概念を採用したという故事による。明 るいうちに、食べ物を集めて暮らすだけの繰り返しから人は暦を作り、農業を生み出し、食糧の余裕を生み、更に1日を刻 んでより緻密な生活をして、現代の豊かな文明を創り上げた。

 時の記念日は、時間を大切にすると共に、時に縛られず、自分を忘れない記念日の意味もある。先般の、中高生の学力調 査には、時間をキチンと守り、生活習慣の確立されていることと「学力」に深い相関関係があることが証明されている。

 「自調自考」の幕張生諸君、ここで「時間」活用について考えてみよう。


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平成15年(2003) 7月 8日改訂