えんじゅ:172号
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一年D組 倉知 歌舞伎教室の少し前、アテネ五輪で日本のシンクロチームが歌舞伎をテーマとした演技をする事を知った。 自国の伝統芸能への社会の関心の高まりを感じながら、私も張り切って臨んだ。 最初に歌舞伎の基本知識や楽しみ方のコツの解説があり、初心者の私たちにも雰囲気がイメージできたところで、 舞台の幕が開いた。 前半は、慣れない古語を独特の抑揚で話す台詞を理解することに気が行っていた。 しかしそのうち、役者の仕事を必死で追っている自分自身に気づいた。彼らの動作の 一つ一つが、私を虜にする確かな美しさを持っていたのだ。中でも、絶世の美女絶間姫の、しなやかさの中に 時折見え隠れする計算し尽くされた色っぽい仕草や間には、あれは男だと自分に言い聞かせつつも、ドキドキ させられてしまった。性別をも超越した洗練された動きに「女方は女以上に女らしい」という説明を実感した。 彼らの動作は、リアリティーを既に離れた様式としての美になっているのだが、あの舞台を見た後では、私も 日常のちょっとした場面でああいった素敵な仕草が出来ればと思ってしまう。 かの大女優オードリー・ヘップバーンの気品ある仕草は、かつての日本女性のそれに例えられたという。
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平成16年(2004) 7月 5日改訂