Strategyという言葉がある。一般的には「戦略」と訳されるが、この語源はギリシャ語のSutoratejia(困難な状況に直面した能力)という。だからStrategyの本意は「持てる能力を効果的に使う能力」となる。
「生きる力」が近年問われているが、それはまさにStrategyに他ならない。その涵養に向けて本校進路部では「GLFCプログラム」を立ち上げている。GLFCとは学校の教育目標であるGlobalism、諸君に求められているLeadership、そして未来に向けたForesight(先見性)、そして、これらに必要な感性のCuriosity(好奇心)の頭文字である。これらは自身の常識の殻を破り、自身を開放することにも繋がる大切な資質でもある。
少し前のことだが、新聞にこんな投稿が掲載されていた。
『高校を卒業します。高校生活は友達に恵まれ、毎日が楽しくて仕方がありませんでした。しかし、目の前の楽しさに甘えていました。大学受験のために論文の授業を選んで、現代社会の苦しみに触れ、驚きの連続でした。自分が社会に対して無知であることが恥ずかしくなり、高校時代という貴重な時間に何かを得ようとしなかったことにいま後悔しています。私を含めて無知ほど怖いものはないと思っている学生はどれほどいるのでしょうか。それを気付かせてくれる先生が何人いるのでしょうか。』
Curiosityの原点はこうした「無知への恐れ」にあり、それが起因となってStrategyが高まっていく。
ある調査によると、日本の高校生は、アメリカや中韓などの近隣国に比して「自分に対する自信」である「自己肯定感」が極めて低いという。「自己肯定感」とはまさにStrategyであり、これが低いことで、過度に周囲の評価を意識し、それに振り回され、ついには自己を喪失してしまう。
この状態では人生は楽しいはずがないし、国家の将来までも危惧される。Curiosityの涵養は、柔軟性をもった発想のできる若者の特権であり、この特権を生かす機会の提供を「GLFCプログラム」の意義に置いている。
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ところでCuriosityといえば、今、AI( Artificial Intelligence)がトレンドになっている。AIには明確な定義がなく、人間のような「知性」をも持つ人工物の創造をさしている。そして、AIの成長の最大の阻害は「ヒトの英知」の余計な介入であると言われ、AIはますますヒトの感性にアプローチしてくると考えられる。そして、Technological Singularity(技術的特異点二〇四五年)においては、AIとヒトとの共存が大きなテーマとなってくる。今年の「GLFCプログラム」ではこのAIも取り上げていきたい。
この夏も、孤独で退屈な哲学の時間を有意義に過ごしてもらいたい。
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