えんじゅ:314号  


 

 

進路講演会

「七転び八起き、気づけば最前線
 ―内視鏡下手術、
手術支援ロボット、
遠隔診療への挑戦」

独立行政法人国立病院機構
 東京医療センター名誉院長
松本純夫先生


 十一月二十六日(月)、進路講演会を独立行政法人国立病院機構東京医療センター名誉委員長である松本純夫先生を講師にお迎えして実施いたしました。 講演は、まず、ITの利用に伴う、医療技術の大きな変化についてのお話から始まり、具体例として、最先端の手術支援ロボット「ダ・ビンチ」を映像とともに紹介され、医師の疲労軽減、遠隔操作、ロボットアームの可動域の広さなど、ロボットを利用する利点を具体的に説明されました。さらに、少子高齢化の進展により、医療のあり方が変化する中で、ロボットや3D観察技術などの、最先端技術による医療技術の発展の益々の重要性を話されました。  松本先生の外科医としての長い経験の中で、例えば外科手術は、大きく切除再建する方法から、小さな切り口から手術器具を挿入して行うものに劇的に変化しました。内視鏡手術の第一人者であった先生は、当初から、この手術の創部疼痛の少なさや、手術後の回復の早さといった多くの利点を確信していましたが、国の医療保険がなかなかそれに適応されず、せっかくの手術の症例が減ってしまうという挫折を経験されました。それでも、患者の笑顔を原動力として困難を乗り越えていかれました。  講演後も生徒からの多くの質疑にも丁寧に対応いただきました。「好きな食べ物」から「日本の医療における最先端技術導入の遅さについて」まで幅広い質問への回答の中で、法令の縛りによる電子カルテネットワーク構築の遅れや、その近隣諸国との比較、日本の医療機器メーカーの自前の技術へのこだわりが、最先端技術の妨げになっていることへの提言、さらには外科医の後継者育成の問題など、松本先生の医療に対する知見の深さと情熱に多々触れることができました。  医療関係を志す生徒にとってはもちろん、異なる分野に進もうとしている生徒や、進む方向がまだ定まっていない生徒にとっても、諦めずに挑戦をし続けることのすばらしさを学ぶことのできた、とても実りのある講演会となりました。 (進路部・五月女慶)
 

千葉大学医学部模擬講義


 11月13日(火)、進路部のGLFC Programの一環として、千葉大学大学院医学研究院先端がん治療研究講座から丹沢秀樹教授をお招きして、第1啓発室を会場として「人が勉強する本当の理由」というテーマで模擬講義を実施いただきました。講義は、人間の脳の構造の解説からはじまり、理論科学と実証科学の違いや「波動」などをテーマに、「物の本質を見る視点」について進められました。さらに、最澄の「一隅を照らす」の引用から、社会の中で優れた医師となるための心構えや、コッホ、パスツール、華岡青洲などの世界の医学会の泰斗の研究内容や実績の解説、ご自身の専門の、がん研究のテーマなど、興味深い話がその後も次々と展開されました。参加した60名の生徒は、医学の奥深さと医師としての使命の大きさを実感する貴重な時間となりました。(進路部・井上)
 

東京大学工学部模擬講義


 11月29日(水)、進路部のGLFC Programの一環として、東京大学工学部航空宇宙工学専攻の小紫公也教授をお招きして、第1啓発室を会場として「未来のロケット推進」というテーマで模擬講義を実施いただきました。講義はアポロ計画による月面着陸のお話から、当時使用されたロケットの構造やその後のロケット技術の停滞の問題、近年の低コスト型のロケットエンジンの特長へと話が進み、さらに、未来の宇宙開発のための大量輸送ミッション達成のための取り組みである、レーザーライトクラフトや電磁ビーム、さらには、マイクロ波によるロケット推進の研究などの最先端の研究を紹介され、最後に、参加した60名の生徒に対して「Frontier」の気概を熱く説かれました。お話のスケールの大きさもあり、とても充実した時間を参加者は過ごしました。(進路部・井上)