えんじゅ:144号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCXXXZ)


幕張高等学校・附属中学校校長

田 村 哲 夫

 平成13年、21世紀最初の年、渋谷幕張高等学校か19期生、附属中学校は16期生を迎え、 希望と夢いっぱいの新しい学年をスタートした。新世紀に「自調自考」生としての道を選択した 新入生諸君に私達は今、心から期待している。21世紀に活躍する人材をという目標で開校され た学校にとっていよいよである。21世紀はグローバル化が進む。そこで活躍する為には、世界 市民としての資質を身に付けねばならない。

 世界市民としての資質とは、総合的判断力(想像力)・自分のアイデンティティ(自分らしさ) を社会に位置づけるという意味での社会的責任感そして地球規模の視野で考え行動することが考 えられよう。

 つまり、いよいよの社会経済の高度化複雑化した状況が21世紀であるなら、そこに生きる人 は、高度の専門性と同時に他方広い視野がどんな専門にも求められ、分野相互の関連が分かって いる必要がある。これから一層理系・文系といった学問の区分けを超えた取り組みが大切となろ う。

 又科学技術の高度化は、それを扱う人間に高い倫理性と社会的責任感を求めることになる。

 そしてグローバリゼーションの進展は、一方に異質な文化がそれぞれ自らの個性を強く主張す る世界をつくりだす。ここでは、異なった文化の理解という地球規模の視野が必須の条件になる のであろう。

 そしてこうした「重要で高い目標」にとどく為には、目標をしっかりと心に刻み、1人1人が 持つ豊かな個性がのびのびと展開される(1つの鋳型にはめこめるのでない)よう、地道な毎日 の努力、積み上げが大切なこととなる。本居宣長が、学問を志す人達の為に著した「初山踏」( ウイヤマブミ)(1799年刊)に述べているごとく「功在不舎」(成果をあげるには、こつこ つ休まずにやるほかない)なのである。

 大切なのは、自分の人生の意味を考えた上での「自調自考」であって、強制されたり、云われ た通りだけやることではない。

 連休中、東京芸術大学卒業の本校卒業生(6期生)演奏のバッハ没後250年記念コンサート をサントリーホールで楽しんだ。今や日本のオルガニストとして一流の演奏家に成長した彼女の 若さ溢れるダイナミックな演奏に感激した。と同時に、18世紀音楽の系譜ではバロック時代、 楽器の王者として活躍したオルガンが、その後の古典派・ロマン派の時代にオーケストラに主役 を奪われ、オルガンは後方に押しやられてしまっていることを考えてみた。

 音楽的には「多様性を重んじ、異なる要素を相互の間に生じるコントラストを楽しむ」ポリフ ォニーから、「調和が保たれて緩やかに纒まった融合の美を好む」ホモフォニーに人々の趣味が 移ったから、ポリフォニー音楽のオルガンという楽器が中心でなくなったと説明されている。

 然しグローバリズムの支配する21世紀では、又オルガンが好まれる時代になるのではと思っ たが、自調自考の渋幕生諸君はどう考えるか。

 


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平成13年(2001) 7月19日改訂