えんじゅ:153号校長先生講話 |
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「自調自考」を考える(そのCXLW)幕張高等学校・附属中学校校長田 村 哲 夫 |
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平成14年、2002年高 校は20期生、中学では17期 生を迎えての希望にみちた新学 年がスタートした。 21世紀の2年目である。 今世紀の特長は昏迷、見通し のつきにくい、多様多種ハイブ リッドの目標のたてにくい時代 と云われる。 そこで、一人一人が、どう目 標を作定し、どう生きていった らよいのかを考えてみたい。 まず21世紀がここからはじ まったと云われる、多文化、多 人種、多宗教社会のアメリカ・ ニューヨークでおきた同時多発 テロ事件をみよう。被害者は数 千人で殆どあらゆる宗教・国籍 の人々が含まれている。そして 事件の性質は、前世紀末ハンチ ントン(ハーバード大)の指摘 した「文明の衝突」そのもので ある。 人間はいったい、今世紀そし てこれから何を起し、どんな方 向に生きていくのだろうか。 これまで人類社会は、地球上 で、人間を人間たらしめる高次 元の精神と社会と文明を生み出 し、その文化と歴史を創り出し てきた。この原動力は「人間の 精神と身体と行動」であると云 えよう。 そしてこの「精神と身体と行 動」という大変不可解なもの= 実はこれが今回の事件も引きお こしたのであるが=を解明しよ うと、長い歴史のなかで人類は 努力をしてきた。 考え得るかぎりの思索を通し て整合的な考え方を見出し、日 常的現実の中から根本的問題を 見つけ出す知的作業、哲学はそ の努力の第1の方法であった。 哲学の哲学らしさはその批判的 伝統性=批判的に「伝統」と対 話する姿勢=にあると云われる が、哲学者は常に過去の伝統と 批判的に対話し、そして自己の 思索も将来の哲学者に対話の対 象とされることを予想して思索 することが守られてきた。 又、第2の道は不可知への信 仰によって総合的な見方を得る 宗教によってであった。ここで は、現代における宗教と社会と の関わりを考えるうえで最も重 要な「ファンダメンクリズム」 原理主義の問題は大きな課題と なっている。 そして第3の努力の道は科学 である。それも経験科学といわ れるものである。ものごとを出 来る限り現象に即して観察し、 論理整合的な仮説を設定し、検 証に耐えうる方法論を見出す学 問を経験科学と云うが、人間を さまざまな角度で観察、研究 し、できるだけ整合した見方で 理解し、万人にわかるように説 明しようとする知的営みを指す と考えてよい。今日云われる総 合的な「心理学」が完成されれ ば、その役割を果せることにな るのか。 在位50周年記念演説で英女 王エリザベスU世が21世紀の指 針として「外に向けて開かれた 意識」「社会の公正さと寛容」 そして「豊かな多文化、多宗教 社会」の3つを述べられた。そ して、私は1年前本稿でポリフ オニー音楽を例にして、人類に とって、民族としての多種多様 な文化の歴史と存在の21世紀で の重要性について主張した。こ れらを考え「人間の精神・身体 そして行動」を考えれば考える 程、重要で高い目標意識をもつ 「個人」の存在の大切さが浮か びあがってくる。 自調自考の大切さが。
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平成14年(2002) 5月28日改訂