えんじゅ:166号校長先生講話 |
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「自調自考」を考える(そのCL[)幕張高等学校・附属中学校校長田 村 哲 夫 |
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2学期、秋酎(タケナワ)。 この時期、アメリカでは、子 ども達が街中で、"Trick or treat" と云って近処を廻る日=ハロ ウィーンHalloween(10月末)、 そして11月には第4木曜日、 収穫感謝の日= Thanksgiving Day= がある。共に収穫 の秋を祝うもので、 近年では欧州特に 英国で、一般に祝う 日となりつつある。 日本でも秋は 「豊穣祭」(ホゼマツリ)といっ て五穀豊饒を祝う 秋祭りが、大人も 子どもも共に祝う 行事として各地で 催されている。そ してその後、各地 の神々が出雲大社に集合し、10 月は神無月(カンナヅキ)となるが、出雲地方 だけが、神在(カミアリ)月と云われること になる。 学校でも、2学期のこの時期 は”活動の収穫”を刈り取る時。 大きな行事=槐祭と修学旅行が 終了し、学内は落ち着いた雰囲 気で、これ迄の行事を含めた活 動で培(ツチカ)われた活力を生き生きと 活躍させる時を迎えている。 ところで人間にとって「歴史」 となる「時・時間」の経過で人 類が最初に衝撃をうけた事件は、 1522年7月10(木)におきて いる。この日地球周航をはたし たマゼランの部下がセネガル沖 の島に寄港した処、正確に記録 された航海日誌では7月9日(水) なのに、陸では1日早く進んで いて、航海日誌から1日失われ たことになった。 それから400年余り後、19 05年、スイス連邦特許局に勤 める技師アインシュタイン(26)が 「運動する系では時間は遅く進 む」という奇怪な結論を論文と して発表する。 この年は、後に奇跡の年と云 われるのだが、マゼランの時代 に経験によって始めて獲得出来 た結論、すなわち時間は奇妙な 性質を持つという結論が、ここ で思索のみによって獲得出来た ことになる。この理論を「相対 性理論(一般・特殊)」と呼ぶ。 こうした「時間」(歴史)につ いての人間の感覚、意識も時代 によって変化するようだ。アラ ン・コルバン(仏・歴史学者)は 現代を”平らなスクリーンの時 代”と呼んでいる。「過去への関心 が薄れ、現在に対する浅い関心 だけが過剰になっている時代。 いわば歴史感覚の平面化が進ん でいる」「変化の激しくなった19 世紀の人々は速く流れ去る時間に 対し不安や恐怖感を持っていた。 ところが20世紀に入ると速度 の文化が加速化して、速く流れ る時間への不安が消えた。これ に進歩の哲学や消費は善だとい うコマーシャル文明の台頭が重 なり合い、新しいものほど価値 があるという方向に社会全体の 風潮が変わった。」 「こうして歴史の重みへの関心 が急速に失われ、歴史を知らな い知的に貧しい社会が生まれつ つある。」 このように、歴史の重みや厚 みに対する感覚が少しずつ失わ れていった変化の原因には、 人々の時間の概念や時間感覚そ のものが変っていったことが背 景にあると考えられる。どんな に変化が激しくても、視線を過 去の人間の歴史に向け、今が歴 史の中のどんな時代かを問題と して考えている姿勢を失っては ならない。「歴史」を学ぶ自調自 考生どう考える。
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平成16年(2004) 1月 8日改訂