えんじゅ:166号

高校2学年修学旅行
〜九州への旅〜 10/5〜10/10


 今年の高校2年生の修学旅行 は、SARSの流行には勝てず、 中国行きを断念、久しぶりに全員 が九州に出かけることになった。

 4月から宿舎や飛行機の座席 の確保を始めたにもかかわらず、 幸い長崎は全員での宿泊がかな い、そこから3つのコースに別 れるという計画になった。

 ・長崎〜萩コース
 ・長崎〜鹿児島コース
 ・長崎〜壱岐コース

 鹿児島コースは、さらに、屋 久島コースをはじめいくつもの 小コースに分かれ、全体として は極めて多彩なものになった。

 長崎では班別行動で夕刻まで 見学。中には名物の坂を上りに 上って、坂本龍馬の亀山社中跡 をめざし、たまたま道を尋ねた 相手が保存会の関係者で、閉館 日にもかかわらず見学させても らった幸運なグループもあった。

 中国行きがかなわなかったと いうネガティヴな気分もなく、 終わってみれば、やはり「楽し い修学旅行」であった。


長崎 → 萩 コース

 初日長崎空港に入り、島原を スタートに萩・秋芳洞まで、北 九州から中国地方までを西から 東に横断する旅行となった。

 6日間を通じて最も印象に 残ったのは、自然の美しさだっ た。島原、長崎、唐津そして萩 と、訪れる場所で潮の匂いを嗅 ぎ、自然の豊かさを感じる事が できた。名護屋城址の石垣の上 から玄界灘を臨み、彼方の壱 岐・対馬を眺めたり、萩の菊ヶ 浜では昼食を取りながら大きな 町のそばに美しい海があること に驚かされたりした。他にも、 秋吉台・秋芳洞では人間の力を はるかに越えた大自然の営みに 圧倒され、息を飲むばかりで あった。

 また、訪れる町々は何処も長 い歴史と共にあり、普段の生活 で忘れている時間の奥行きが感 じられた。明治維新の原動力と なった長州藩の偉人達を育んだ 萩では、史跡を訪れしっとりと した町の空気に触れてゆったり とした時間を過ごし、夜には大 騒ぎをしながら萩焼き挑戦した りもした。吉野ヶ里遺跡では、 整備され復元した建物の前で、 現地ガイドの話に耳を傾け、想 像を巡らしながら見学し、解散 後も忙しく熱心に歩き回ってい る姿もあった。

 このコースは少人数だった 分、自分たちのペースで旅行を 落ち着いた思い出深いものとす ることができたと思う。


長崎 → 鹿児島 コース

 「日本の大自然を体感する」 をテーマに、鹿児島コースを実 施しました。

 福岡から九州に入り、太宰府 吉野ヶ里遺跡を見学し、長崎で 2泊しました。長崎の自由行動 を終えて、3日目は(1)天草を通 り阿蘇登山をする、(2)雲仙普賢 岳の自然の脅威を感じながら、 阿蘇登山をする、(3)雲仙普賢岳 を見て、山と共存する島原の文化 を感じるコースに分かれました。

 4日目は、高千穂と通潤橋を 見学し、鹿児島に入りました。

 5日目は、(1)鹿児島市内の自 主研修、(2)世界自然遺産を体感 できる屋久島、(3)宇宙センター のある種子島、(4)薩摩焼の里で 壽官陶苑のある美山、(5)特攻隊 の基地のあった知覧から、鑑真 の上陸地である坊津、南国の ムード漂う長崎鼻や開聞岳の見 学を行う5つのコースに分かれ ました。

 最終日は、桜島観光と仙巌園 を見学し、九州を後にしました。

 生徒達は混乱することなく、 九州の大自然を満喫しました。

   ●沈壽官先生訪問

 14代沈壽官先生に本校でご 講演いただいたことをきっかけ に、先生の元を訪ねてみる企画 を修学旅行で立てました。希望 者が3斑11名集まり、先生の お育ちになった薩摩焼の里であ る鹿児島県美山を訪問しました。

 壽官陶苑の資料館に入ると、 沈先生が笑顔で迎えて下さいま した。資料館を沈先生ご自身が 案内され、1つ1つの作品に込 められた先祖の熱い想いを話し て下さいました。

 また、生徒達は日頃抱えてい る生き方に対する問いを沈先生 に発し、先生は真剣に受け止め て下さり、昼食時まで熱心に生 徒達に語って下さいました。 「オンリーワンになれ」という メッセージを銘記しました。

   ●屋久島

 渡れない時は、引き返す条件 付きでの約2時間の乗船後、無 事に屋久島に到着。目的の「白 谷雲水峡」を目指すバスの窓を 覗く、野生の鹿や猿が、姿を見 せてくれた。白谷雲水峡へのス タート地点に到着すると、大 雨。カッパを着てのトレッキン グとなった。雨の影響で予定し ていた「もののけ姫の舞台」 コースを変更せざるを得なかっ たが、林内を流れる清流、重な り合った巨岩、切り立った渓谷 を身近に味わった。「弥生杉」 等、数々の杉を見ることがで き、屋久島の大自然を満喫し た。カッパを着ていても衣服は 雨で濡れしまうような大変なト レッキングとなってしまったが、 生徒達は満足した旅になった。

   ●知覧(特攻平和記念館にて)

 複雑な思いで見学した。特攻 は愚行だったと思うが、そんな 表現を許さない雰囲気がここに はある。特攻は国家的判断に強 いられた個の悲劇である。若い 特攻隊員の遺書等には、生にこ だわりながらも振り切って死ん でいった、彼らの純粋な苦悩が にじみ出ており、衝撃を与え る。しかし、彼らを勇士と呼 び、英霊と祀るならば、その死 の意味を曖昧にすることになら ないか。パンフレットには「国 を思い、父母を思い、平和を願 いながら…」とある。平和のた めの戦争、個人への想像力に欠 けたこのフレーズは今なお耳に する。記念館には軍服姿の写真 しかないが、彼らは本来市民で あった。特攻は人とその暮らし の死である。

   ●種子島

 この研修前に種子島について 知っている事は「鉄砲伝来」、 「宇宙センター」の2つだけで 他には予備知識がありませんで した。それだけに予期せぬ自然 の豊かさに驚かされました。

 最初に訪れた「千座の岩屋」 は潮が引いたときにあらわれる、 自然が生み出した海食洞窟で す。洞窟の神秘さと海の美しさ に時間を忘れてしまいそうでし た。そして、米作りが盛んなの にも驚きました。途中、門倉岬 で突然のスコールに遭いました が、本当に水の豊かな島です。 食べ物も海から、陸からいろい ろなものが食膳に並びます。ま たいつか、できたら夏に、 ジェットフォイル「トッピー」 に乗って訪れたいと思います。


長崎 → 壱岐 コース

 「海の向こうに思いをはせた先 人達を訪ねて」がこのコースの テーマ。

 太宰府から吉野ヶ里を経て、 長崎、平戸、そして旅行4日 目、いよいよ壱岐へ。

 夕刻の港で島の役場の方など に迎えられ、入島セレモニー。 生徒47名の代表としてE組の 昆君が堂々たる態度で挨拶。 バスで島の高台を目指し、丸い 海に沈む夕日に感動。

 5日目。壱岐での見学の目玉 である原ノ辻(はるのつじ)遺 跡へ。弥生時代の大規模集落跡 で、船着き場の遺構まである貴 重な遺跡である。古代より大陸 との接点にあった地らしく出土 品にも他地には見られない多彩 さがある。ここでは、現場で発 掘調査している研究員の方に案 内していただいた。生徒達がこ ういうところでは熱心に見学す ることに感心する。質問する者 も多く、その内容も良く、研究 員の方の顔がほころんでいた。

 昼食は、働かざるもの食うべ からず、地引き網を引きに筒城 浜へ。白い砂浜とどこまでもき れいな水に興奮しながら引き上 げた鯛をはじめとする大量の魚 のさしみ、塩焼き、潮汁、用意 された握り飯と壱岐牛や野菜、 とても食べきれまいと思いきや ……恐るべき10代の胃袋。

 午後は、島の歴史研究家の占 部さんのご案内で、古墳の玄室 などの歴史的遣物や、景勝地 「猿岩」などを見学し、この旅 行のメインイベントが終わった。


えんじゅ表紙へ

学校表紙(もくじ)へ


平成16年(2004) 1月 8日改訂