令和2年度キャリアガイダンス

10月10日、高校2年生を対象としたキャリアガイダンスが実施されました。これは卒業生を招き、高校卒業後のキャリア形成について講演してもらうもので、今年も4名の卒業生がお忙しい中、後輩の為に駆けつけてくれました。

始めに登壇したのは34期の太田敦也さん。現在一橋大学の2年です。実際の時間割を見せながら大学での講義について、またサークルやアルバイトについて話してくれました。更に、高校2年生から卒業までの自身の勉強内容などを一覧にして示し、「塾に行く場合は利用されるな、利用しよう」「部活は引退まで続けよう」「仲間や親への感謝を忘れずに」などの熱いメッセージを送ってくれました。生徒たちが受験生活、大学生活を具体的にイメージしやすくなるようなお話でした。


続いては、30期の北島萌絵さん。東京大学を卒業後、同大学院で社会文化環境学を専攻されています。「都市工学」がどういう学問で、なぜ惹かれたかから始まり、大学・大学院生活での経験と、それらを通して考えたことを話してくれました。「大学での設計課題」「友達や教授、他大学の学生との議論」「広告という他分野のコンペへの挑戦」「沖縄の離島の生徒への学習支援のアルバイト」など、多様なことに取り組むことで視野が広がり、自分の強みや弱みを客観的に見られるようになったという言葉には説得力がありました。また、高校までの「正しい選択をしなければ」という正解を求める考え方から、「自分がやっていてワクワクする方を選ぼう」というマインドへの変化についてや、身に付けた知識が直接的に何かに繋がらなくても、そこで考えたことや経験の積み重ねが新しい自分を生み、次に繋がっていくというお話には多くの生徒がハッとさせられたはずです。


3人目は同じく30期の有元万結さん。東京大学法学部を卒業後、外務省北米局で事務官を務められています。東日本大震災や不安定な日本政権、中国での反日デモなどを中学・高校時代に目の当たりにし、「日本大丈夫か!?」という想いが膨らんだことや、模擬国連に参加した経験などを、外交官を志すようになった経緯として話してくれました。大学時代のディベート大会では、変革の前提となるはずの議論さえも自由にできない場面に遭遇し、言論の自由が保障される世界を創りたいと思うようになったとも。また、2年目の外務省員の仕事も紹介してくれました。国会答弁の準備やダイヤモンドプリンセス号のアメリカ人乗客の対応など派手なものだけでなく、国際会議における国旗の配置や、トランプ大統領の相撲観戦の段取りなど一見小さなことのように見えるものでも、外交において重要な「場」を設定するという意味で大切であるという言葉はニュースなどを見る目を変えたかもしれません。国民全体に奉仕する、日本・世界をより良くしたいという真っ直ぐな姿勢に憧れを抱いた生徒は多いのではないでしょうか。


最後は27期の永井基慈さん。慶應義塾大学薬学部を卒業後、現在は同大学院の博士課程に在籍しながら、国際医療研究センターでも研究をされています。昨年にはNature、Scienceと並ぶ三大科学誌に数えられるCellにファーストオーサーとして論文が掲載されるなど、活躍が目覚ましい若手研究員です。テーマを設定する段階から、一般的な研究のプロセスを説明し、その際には自分から動くことが大事であること、分かっていないことを知るためにも勉強は必要であること、総じて「自調自考」の力が求められることを力説してくれました。また、学部1年生で読んだ雑誌がきっかけで腸内細菌を研究するようになったというエピソードから、自身の研究についてまで、熱く語ってくれました。研究内容を理解できた生徒は多くなかったかもしれませんが、興味があることを楽しんで突き詰められる研究職の魅力は十分伝わったようでした。

大学受験を徐々に意識し始め、目の前の勉強のことで頭がいっぱいになってしまいがちな高校2年生のこの時期に、視野を広げて少し先の未来について考える貴重な機会となりました。4名の卒業生の皆さんに感謝致します。