12月21日(木)「自調自考」を考える 第305号

 二学期が終了する。冬期休み。
 短いが年が改まる大切な時間。
 心して有効有益に送りたい。 季節は、小雪、大雪そして冬至と移り、冬至、初候乃東生ず。
 かつて一年のはじまりだった冬至。これから日が伸びていくので古代には、柚子の香りや薬効で体を清める禊の意味で柚子湯を楽しむのだ。
 十二月三十日は小晦日。三十一日は大晦日と呼ぶ。 つごもりとは、月が隠れる月籠のこと。太陰暦では毎月末は新月。  除夜は「旧年を除く日、徐日」の夜の意。除夜の百八回の鐘をつくのは十二ヶ月と二十四節気とそれを三分した七十二候の合計だと云うが後に百八の煩悩(仏教由来)を一つずつ消す為と云われるようになった。
 あらたまの年行きがへり春立たば  まづわが屋戸にうぐひすは鳴け 万葉集大伴宿彌家持
 アメリカのパリ会議離脱、英国のEU離脱(BREXIT)、難民問題等欧米諸国にとって岐路の年といわれた二〇一七年を終え、世界は新しい年を迎えようとしている。
 私達の学校では、いよいよSGH(スーパーグローバルハイスクール)として来年七月に世界六大陸から参加する二十九校百五十名の高校生と日本全国から集合するSGHの高校生が一同に会して使用言語英語での高校生シンポジウムを開催する(Water is Life 2018)。
 ところで今年も押し迫って喫驚した報道があった。「チバニアン」ラテン語で「千葉時代」という意味の地球史の時代区分の話題である。千葉県市原市房総半島の養老川岸の断崖の地層が、地質時代の境界を代表する「国際標準模式地」の候補に残ったというのである。
 地球は四十六億年の歴史を持つ。中心部は金属の核で出来ており固体の内核を液体状の外核が包む構造になっている。外核の主成分は鉄やニッケルで高温で溶けており、温度差で対流している。対流で金属が動くため、電磁石と同じ原理で地磁気が生じる。この地球の地磁気のN極とS極が反転する可能性を世界で最初に唱えたのが京都大の松山基範博士である。兵庫県北部の玄武洞の岩石が今の地磁気と逆向きの磁性を帯びていることを発見、国内や中国の岩石も調査して昭和四年(一九二九年)世界初の地磁気反転の論文を発表した。
 地磁気の反転が起きる仕組みは実は今でも正確には分っていない。現在は世界中の地質調査で反転は過去何百回も起きたことは分っている。人類最古の足跡の化石が確認された三六〇万年前からは現代まで十一回の反転が判明している。
 このような全地球規模での地磁気や気候の変化を目安に地球の歴史は115に区分されている。地質学の国際地質科学連合は各時代の代表的地層一ヶ所を「国際標準式地」に選び、時代名を決める。今回の時代七十七万年前から一二万六〇〇〇年前は最適な地層が決まっておらず名前がなかった。「チバニアン」はその時代の地層に含まれている磁力を持つ鉱物が含まれる岩石等の調査でこの時代の特徴を示す地磁気反転の痕跡を示し、更に当時の環境がわかる花粉や海の微生物化石などのデータもそろえたので、今回の決定となった。
 地質学は欧州で発展し研究者も欧州に多く、日本名が地質名として採用されたことはなく今回が初めてである。
 元素名ニホニウムと並び日本の科学研究の厚みと幅広さを示す大変うれしいニュースであった。どの学問も結果を出す為には理系文系問わず学問間の連携協力が必要であることが明らかになった事例でもある。
 自調自考生どう考える。