12月23日(月) 「自調自考」を考える 第323号

二学期が終了する。学校は冬期休暇に入る。短期間ではあるが、年が改まる大切な時期。新しい年を迎え、有益有効な計画を立ててしっかりとすごしてほしい。
 冬の季語(連歌・俳句・俳諧などに詠みこまれて、その句の季節を示すための特に規定された語。鶯を春、金魚を夏とする類)では、冬を三つに分けて使う。冬全体にわたるのは三冬と云う。二十四節気で云う立冬小雪は初冬に当て、大雪冬至は仲冬、小寒大寒は晩冬に当てる。大晦日十二月三十一日は、冬至に当たる。「つごもり」は「月隠り」の略で、月が隠れて見えなくなること。日本人が古来より自然に親しみ、自然の変化を楽しんでいたことがよくわかる。
 新年号令和元年に当たり、ここで急速に進歩を遂げている人工知能Artificial Intelligenceについて考えてみたい。
 AI(人工知能)という用語が最初に使われたのは米国で、一九五六年ダートマス会議でジョン・マッカーシーが使用してからであると云われている。アルゴリズム(四則計算)において万能のコンピューターを使って「計算以外にも人間の知的能力を実現出来る」と考えたのがはじまりである。
 人の心や脳の働きをどう表現するかを研究する学問を情報科学と云い、人工知能は情報科学の産物である。情報科学の勃興の基礎を担い、しかも認知科学の誕生に大きなインパクトを与えた科学者が三人いる。チューリングマシンと呼ばれる計算機械のモデルの論文を出したアラン・チューリング(英)。次に数値で表現されたアナログ情報を処理する通信と制御の情報処理モデル=サイバネティクス(ギリシャ語で舵取りの意)を提唱した数学者ウィーナー(米)。ここで使われたフィードバックモデルは頭脳の働きを適切に説明する。そして最後のシャノン(米)は情報の伝達・獲得が正しく行われるのは確率的に決まると考え、情報量の単位に「ビット」を使用し、情報科学の基盤形成に大きく貢献した。
 第二次世界大戦でのナチスドイツの軍用暗号「エニグマ」解読をめぐるチューリングの活躍、十八才でハーバード大博士号を取得した天才ウィーナー等々面白いエピソードを沢山残しているこの三人の科学者は、冬休みのような時ちょっと調べてみるのも面白いかも。
 ところで、人工頭脳の、当初の開発目標はコンピューターで人の頭脳の働きを実現することであった。
 人間の頭脳は外部から景色、音、匂い、味等の情報を、大脳皮質の部位で受け入れ、知識によって判断し意味付けをする。現在AIが得意とするのはこの大脳皮質の働きを模擬するところで、この領域では既に人間を凌駕している。つまり認識・記憶・推論・学習の機能とビッグデータの活用により、時に人間を凌駕するほどの正確さで、外界の現象を認識記憶推論し有用な判断を下せるようになっている。チェスからはじまり、将棋、囲碁、更には、簡単な裁判の判決文に至る迄、AIが既に人よりはるかに正確に妥当な働きが出来るようになってきた。ところが人の重要な頭脳の働きとして「言語」があるが、「言語能力」については、AIは「人の発話の背景にある心を理解し対応することが充分に出来ない」。AIには頼れない。人の「心」はヒューモア(人間らしさ)の根幹であり、イノベーション(創造性)の源である。つまり自立した個人の中核である。これからのAIの時代には、偉大な先人達の人生=歴史や、こころを豊かにする芸術、文学を学ぶことが一層大切になる。
 自調自考生、どう考えるか。