7月22日(土)「自調自考」を考える 第302号

 七月、文月。八月、葉月。
 日本古来より、季節の移ろいを表わす二十四節気では、今この時期を「小暑、末候、鷹乃学を習う」と云い、鷹の雛が巣立ちし一人前になる時期と称する。
 学校の夏休みの時期は「二十四節気、小暑、大暑、立秋、処暑」と呼ぶ時期と重なる。
 梅雨が明け本格的な夏となり、もっとも暑い夏が来て、土用のうなぎ、風鈴、花火と夏の風物詩で賑わい、秋の気配がほの見える頃(残暑)、暑さが少しやわらぎ、朝の風や夜の虫の声に秋の気配が漂い出す。この季節、学校は六週間という長い休みに入る。一日ほぼ十五時間余り。計六百三十時間。この時間をどう過ごすか。「自調自考」の学校の生徒諸君はここで毎日の過ごし方の主導権を学校から取り戻し、一人一人が時間をどう過ごすかを決めることが出来る夏休みに入る。  実りある六週間にするのは、君自身にあることをここでもう一回云っておく。OECDの「良い暮らし指標」にも「良い暮らしの要素を決めるのはあなた自身である」と表現されている。ここで君達が良い暮らしを続ける為に幾つかのヒントを今年も伝えたい。「習慣は第二の自然である。」(モンテーニュ)、「努力によって得られる習慣だけが善である。」(カント)、「若いうちは何かになりたいという夢を持つのは素晴らしい。しかし同時にもっと大切なこととして、いかに生きるかと云うことがある。日々の行いを選び積み重ねること、その努力こそが良い習慣を身につけさせ、人生の行方を決める。」(串田孫一 詩人哲学者・山の随筆家)
 夏が来る。  夏山の木末の繁に霍公鳥   鳴き響むなる声の遥けさ  万葉集大伴家持霍公鳥歌
 ところで数学で「完全数」という数字がある。自分自身を除き、割り切れる数をすべて足し合わせると自分自身に等しくなる数字を云う。一番小さい完全数は6である(1+2+3)。次が28(1+2+4+7+14)。その次が496。28という数字は中学3年生の最年少棋士、藤井聡太四段(14才)によって破られた連勝記録の数として一躍有名になった。同時に藤井少年の連勝は「将棋と囲碁で人工知能がプロ棋士に勝った」という衝撃的ニュースを想い出させてくれた。
 コンピュータは数値計算の為開発され第二次大戦中は暗号解読など軍事目的にも使われた。その後、数字だけでなく記号や言葉も処理出来ると判って計算以外の用途に使うようになる。1950年頃チューリング(英)とシャノン(米)がコンピュータにチェスが指せることを示し科学者のコンピュータへの関心が一挙に広がる。ここでAI(Artificial Intelligence 人工知能)という呼び方が決定された(1956、マッカーシー(米))。以降、チェスではディープブルー(IBM製)が当時のチェス世界チャンピオン・カスパロフ氏に勝った(1997)が、機械による翻訳や医療診断の失敗等で人工知能ブームは一時的に低下した。2010年代、機械学習の中でも特にディープラーニング(深層学習)の発展により、将棋ではPonanzaというソフトの登場で「実力的にトッププロ棋士を超えた」と認識され、情報処理学会は「コンピュータ将棋プロジェクトの終了宣言」を出した。この時人工知能が人間に勝ったと関係者は発言した。
 人工知能は人類が幸福になる為の道具と考えて使用するものでコンピュータの能力が人間の能力を超える時=シンギュラリティ(技術的特異点)=はどんな時代となるのだろうか。そこでは人工知能に使われるのではなく使う人間になることが重要。その為何を身につけたらよいのか。
 自調自考生、どう考える。