7月23日(火) 「自調自考」を考える 第320号

 六月、水無月。七月、文月。
 明治五(1872)年に「改暦の詔書」が出される迄、日本では季節の移ろいを細やかに取り入れた二十四節気と七十二候という旧暦(太陰太陽暦)が長い間親しまれてきた。
 旧暦によれば、芒種、夏至、小暑、大暑の季節が続く。学校は小暑鷹乃学を習う。土用入りのころ夏休みに入る。旬の行事である夏越の祓が多くの神社境内で行なわれている(茅の輪くぐり)。
 令和元年一学期終了。学校ではこの間に地区別保護者懇談会(前期報告書参照)、授業公開研究週間、スポーツフェスティバル、メモリアルコンサート(高二生徒ピアノ演奏)、そして中一野田校外研修、高一歌舞伎鑑賞、高二オペラ鑑賞等の重要な行事が終了。
 七十二候小暑鷹乃学を習う時期に始まる夏休み。鷹ならぬ生徒諸君も充実した夏休みの過ごし方を工夫してほしい。
 時に今年は2020年東京オリンピック開催前年。落ち着かない時期に重なりそうである。
 ほぼ毎日15時間余、約6週間総計630時間。これをどう過ごすかは、その後の学校生活に迄大きな影響を齎すもので、充分に自覚自重して実りのある六週間にしてほしい。その為には計画を立てる必要があろう。そして実行。私の大好きな言葉である「習慣」の実行である。
 「習慣は第二の自然である」(モンテーニュ)。「努力によって得られる習慣だけが善である」(カント)。そして「若いうちは何かになりたいと夢を持つことは素晴らしい。しかし同時にもっと大切なこととしていかに生きるかということがある。日々の行いを選び積み重ねること、その努力こそが良い習慣を身につけさせ、人生の行方を決める」(串田孫一、詩人哲学者、山の随筆が有名)。自調自考生よ、良い習慣を身につけよう。
 今年はハヤブサⅡや、ブラックホールの撮影、重力波の観測計画等多くの宇宙関連のニュースが耳目を引いた。
 「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じていくことである」
(「農民芸術概論綱要」、宮沢賢治)
 ヒューマニズムの作家詩人として有名な宮沢賢治は、1924年夏、はっきり意識しながら、自覚的に銀河系(天の川)とりわけその全体像に直面したという体験を持つ。この体験が彼の内部で作品『銀河鉄道の夜』(童話1925年ごろ)として結実したという。そしてこの体験は詩にもなって残されている(1924・7・5)。その夏の夜の空は天頂から、はくちょう、こと、わし、いて、さそりなどの各星座が、南の空にたぎり落ちるように輝いていたようである。
 夏。宇宙に、夜空に関心を持つことも素晴らしい。
 そこで心配なのでもう一つ「本」を紹介しておきたい。米国でベストセラーとなった『長寿と性格』という研究書である。本の内容は1921年から当時十歳前後だった子ども達約千五百人の生涯にわたって調査した報告である。この研究によると最も長生きした人は、子どもの頃からまじめな人であった。何事も慎重に考え、喫煙や深酒といった健康リスクのある行動はとらない。その上真面目で勤勉だから他の人に信頼され、職場で満足出来る仕事をしている人が多いとのこと。逆に明るい楽天家は不健康な生活習慣に陥りやすく、「これくらいなら大丈夫」という安易な楽観が災いするようである。この本では長生きのカギを握る性格は「勤勉性」であると述べている(日本が長寿国である理由かも)。
 自調自考生、充実した夏休みを過ごそう。