医学部見学セミナー2021を開催しました


冬期休業に入った12月28日(火)、今年も成田市の国際医療福祉大学医学部(以下IUHW)のご支援の下、GLFCセミナー・医学部見学セミナー2021を開催しました。当日は13:00に京成本線・公津の杜駅に中学3年生から高校2年生の参加希望者31名が参集しました。セミナーはまずは全員が大講義室にて、医学部長の河上裕先生から、IUHWの紹介、医学部教育の概要、さらに基礎医学系の模擬講義を実施いただきました。

 ◆ 医学部に行くとどのようなことが出来るか
医学部を卒業すると多様な進路が広がります。例えば「地域医療」、「高度先端医療」といった「臨床」、他にも、「研究者」、「行政」などがあります。先生は臨床における良い医者とは「適度に優秀で、誠実で、情熱があり常に努力を継承し思いやりのある人」であり、よい研究者には「常に新しいものを求め、創造性や実行力が必要である」と説明されました。先生の専門は「白血病」(血液感染リウマチ内科)。治療法の確立しない病気の研究のためにアメリカに12年間留学をされました。学生時代は硬式テニス部、顧問であった小泉信三先生(当時の慶応義塾長)に学んだスポーツが与える3つの力、「練習は不可能を可能にする」・「フェアプレーの精神」・「友」をベースに、先生自身も長く硬式テニス部の顧問を務められました。そうした経験から部活など勉強以外も含めて、若い「今」を十分に生きることが大事だと説かれ、医学部の学生に求められるものとして、4つの条件を提示されました。
1. 社会への貢献 
2. 本質的なものを学び、その関係性を理解できる科学的な論理の理解と最新医学の研究 
3. チームで働くための豊かな人間性 
4. 国際共通言語である英語の習得 

◆ What is Life ? (生命とは何か)
ここからは先生の専門分野についての講義が始まりました。遺伝子や細胞、免疫異常や免疫防御、老化といった研究テーマに続いて、「キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞」といった抗がん剤の効かない癌の治療法、さらには「抗MMDA受容体脳炎」、「多発性硬化症とクローン病」といった、最新医療のテーマについての解説が行われました。
さらに「医学とアートとの連関」というテーマでは、緩和ケア医の関本剛さんのお話し、「ママはこの世にはいなくても」といった著作、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチなどが紹介されました。講義の中では、ノーベル医学賞を受賞された本庶佑先生や、鬼滅の刃の煉獄杏寿郎の言葉などが引用され、とても興味深い内容の講義でありました。
続いて、実際にIUHWで先生が行っている「Immune System (免疫システム)」についての英語によるモデル講義が行われました。国際的な活動のできる医師の養成を目指すIUHWの気概を感じさせる内容でありました。
最後の質疑応答では「医師としてのやりがい」や「アメリカでなぜ学んだのか」といった質問に丁寧に対応いただきました。

※ 河上先生の講義に続いて全体を半分に分け、半分が小児科の椎間先生の模擬講義、半数がIUHWのSCOPE(シミュレーションセンター)の見学を行いました。

 ◆ 小児の予防可能な事故:気道異物
 IUHWの医学教育統括センターの椎間優子先生からは子どもの死因の上位を占めている「不慮の事故」、特に気道異物についての模擬講義を実施いただきました。講義の初めに先生は「一人の子どもの死亡は、その社会の子どもの健康や安全の指標となりうる」との言葉をスクリーンに掲げられ、この問題の重要性を説明されました。「気道異物」とは「異物が気道内に誤って侵入し排出機構では排出されずに滞在する状態」を指し、異物の場所によって上気道異物(鼻腔、咽頭、喉頭)、下気道異物(気道、気管支)に分類され、特に、子どもの鼻腔異物と咽頭異物について「磁石」、「スーパーボール」の誤飲の症例について事例を挙げて説明いただきました。続いて誤飲事故の予防について、「子どもの周辺に小さいもの(おもちゃなど)を置かないこと」「喉に詰まる可能性があるものを口に入れても怒らずそっと取り出すこと」「口に物を入れて動かさない」といった対処法や、窒息を起こしやすい食品の条件(表面平滑性など)、実際にブドウを誤飲した危険な症例の紹介、食品の安全な食べ方などについて解説がありました。
続いて、もし誤飲をして危険な状態になった場合の緊急対応法として運用されている「ハイムリック法(腹部突き上げ法)」について解説があり、実際に人形を使用してシミュレーションを行いました。
最後に先生は、気道異物は予防可能であり、事故は偶発的で避けられないもの(accident)ではなく防止可能な傷害(injury)と捉え、不慮の事故の防止についての市民啓発が重要であると説かれました。

 ◆ SCOPEの見学
「SCOPE」とは、「Simulation Center for Outstanding Professional Education」の略称で、IUHW内にある日本の医科大学としては最高水準にある実際の病院の施設をモデルとしたシミュレーション施設をいいます。実際の医療現場を再現した診察室や病床室だけでなく、集中治療室(ICU)や手術室、ER室など様々な場面の実習が可能な施設です。夫々の施設で丁寧な説明を、小林元先生と仲俊行先生に行っていただきました。実際の医療現場の状況が伝わり、生徒たちは目を輝かして見学をしていました。

※ こうしてあっという間に予定の3時間半が過ぎていきました。今年も、医学部を目指す生徒にとって大変有意義セミナーとなりました。本校生徒の実習体験を毎年快く受け入れていただいた医学部長の河上先生、椎間先生、小林先生、仲先生をはじめとしたIUHW のスタッフの皆様に心より感謝を申し上げます。