キャリアガイダンス2024を開催しました。

 11月3日(土)午後、高校2年生を対象にキャリアガイダンス2024を開催しました。当日は、田村記念講堂を会場に、4名の卒業生に来校頂き、高校2年生に対して、学生、大学院生、社会人という立場から、今後の進路選択に向けたアドバイスや体験談などを、丁寧にお話しいただきました。以下、講師の皆さんの講演の内容を紹介します。

◎つらい時こそ楽しいと思えることを探して!  一橋大学社会学部4年 増田果歩さん(36期生)
私は、大学では体育会洋弓部、高校はドリルチーム部(現チアダンス部)副部長というように、高校も大学も部活中心の生活を送っています。いまでも渋幕が大好きで、中高時代の友人を大切にしてもらいたいし、「楽しい」を大切にして欲しいと思っています。

私は、進路選択を決めたのは遅かったです。その理由は、やりたい仕事がなかったので、仕事から逆算するのも難しく、文理選択も困りました。そこで何を勉強していて楽しいかを中心に考えました。大学は基本的には勉強しに行くところなので、好きな勉強をやりたいと考えて、現代文の授業で学んだ社会学の内容が面白かったことを思い出して、国公立で社会学部がある、一橋大学を第1志望としました。実際にオープンキャンパスに行ってみて、大学の雰囲気も良く、模擬授業も楽しく、行きたい理由が自分の中で明確になりました。自分の感覚を大切にしてほしいと思います。
受験勉強についてですが、行きたい大学に行くためには、避けられませんので、うまく付き合う方法を探しました。自分が勉強していて楽しい対象、ここで勉強すると気分が上がる場所など、楽しいと思える条件を探して下さい。一橋大の論述は重いですが、好きだったので、夜はそれしかやりませんでした。そして、予備校は行きませんでした。学校の授業で精一杯でしたし、コロナの時期と重なったこともあり、学校の先生を頼りました。情報が入らないのは不安でしたが、頼れる先生を見つけて、迷惑かなと思うくらい話を聞いてもらって、質問させてもらいました。そして、適度な息抜きも大事だし、自分を甘やかす方法を作っておくことも肝要です。つらい時こそ、楽しいと思えることを探して下さい。最後に、大学生活は楽しいし、好きなこと勉強できます。自分の判断で出来ることも増えるので、どうか楽しい大学生活を見据えて自分を大事にして、高校生活を楽しんでもらいたいです。

◎これからの時代に研究者を目指すなら  東京大学大学院 大村拓登さん(34期生)
東京大学農学生命科学研究科生命工学研究室・修士2年の大村拓登と申します。高校時代はワンダーフォーゲル部に所属して、山登りばかりしていました。(笑) そして、渋谷幕張中学・高校を卒業して、早稲田大学理工学部科学生命学科に入学しました。早稲田大学では、大学4年から、ケム・インファマティクス研究室という、計算化学という新しい分野の研究室に入りました。そして、研究を進めているうちに、タンパク質の研究をしたいと考えるようになり、大学院では、その分野をしっかりと学べる、東京大学の生命工学研究室に移りました。この期間は、研究論文の公募で研究資金を獲得したり、企業や研究所のインターンなども経験して、密度の濃い時間を過ごしました。今は、酵素タンパクの中で起きている化学反応を計算で解明するために、機械学習を利用した、分子シミュレーション技術の開発を行っています。

私が研究者を目指したきっかけは、元々SF小説が好きだったのと、高校2年で読んだ「サピエンス全史」を読んで、これからはバイオテクノロジーと情報工学が主流になる、と感じた事と、二十歳の時にAlpha Fold 2(タンパク質の構造予測を実行するGoogleのDeepMindによって開発された人工知能プログラム)の登場がありました。

◆研究とは何でしょうか
 研究とはなんでしょうか。大学に行けば1年は確実に研究をします。修士課程にいけば更に2年間研究します。そして、私が目指している、博士課程に進めばさらに3年間は研究をすることができます。そして、優秀なら飛び級で博士号を獲得できます。そして、研究とは、新しい知識を発見する・創る・考え出すことです。そして、研究には、誰もやったことが無いという新規性と、大学の査読(研究成果を認めてもらうこと)が肝要です。こうした研究のやりがいとは、何か月も取り組んできた問題が解決した事の達成感や、同じ研究分野の研究者との、議論や情報交換する時間の楽しさにあります。

◆研究に必要な考え方
 研究に必要な基本のメンタルは、「楽しむ心」・「思い切りの良さ」・「根気」の3つです。そして、あればあるだけ嬉しいものとして、「論理的に考え、話す能力」・「コミュニケーション能力」・「実績と資金」の3つが挙げられます。そして、進む研究分野の選び方ですが、興味のある分野が、たとえ漠然としていても、問題はありません。研究を続けていれば、興味は後からも湧いてきますし、面白くもなってきます。どんな経験も生かすことができます。さらに、これからの時代の研究者は、技術の進化のスピードが、どんどん速くなっていますので、一生学び、競争を続ける必要性があると思います。学んでも、学んでも直ぐに時代遅れになってしまうかもしれません。基礎と最新技術の応用を、同時に学ぶ必要もあります。研究効率を高めるためには、新しい技術への対応、特にAI時代への適応がポイントになると思います。それでも、若い世代の研究者にはチャンスかもしれません。博士課程の学生に対する待遇の改善が行われ、今は研究資金が入るようになってきました。

最後に研究者を目指すなら、ということで、3つお話をします。
1つ目は「行動あるのみ」、チャンスを逃さないようにアンテナを張り、思い切ることです。
2つ目は「人との繋がりがものをいう」、分からない時は分かる人に聞くことです。
3つ目は「自分もまだ道半ば」、お互いに頑張りましょう。

ご清聴ありがとうございました。

◎目標を明確に、人との繋がりや出会いを大切にしてほしい! 日本航空株式会社 秋野広佑さん(30期生)
◆ 航空整備士という仕事
私は、東京大学工学部機械工学科を卒業、さらに大学院工学系研究科機械工学専攻を修了して、日本航空株式会社に入社しました。大学院を出ましたが研究職でなく、現在は、羽田空港で航空整備士をしています。航空機は、安全性を確保できないことには、飛ばすことはできません。次の目的地に到着するまで、安全を確保するのが私の仕事です。今は直接機体整備をする仕事ですが、次はバックオフィスで、飛行機を技術的な観点から、より品質を向上させることを使命とする、サポート部門に異動する予定です。現業部門と、現業サポート部門が1つのチームとなって、航空機の安全性を確保して、お客様に満足してもらうことを、目標に掲げています。今は一等航空整備士試験(国家資格)を受験中です。仕事中には勉強する時間はとれないので、仕事中で学んだことは経験として蓄積して、空き時間にテキストを開いて頑張って勉強しています。受験勉強より勉強している感じです。(笑) 扱うテキストは、一万ページ以上、実務経験も問われますので大変です。普段の仕事には夜勤もあります。航空機の整備は、お客様の顔がはっきり見える仕事でもあり、どんな気象条件でも整備に手を抜けません。毎日が時間との闘いの連続です。でも、お客様が笑顔で搭乗し、特に子供たちが、手を振ってくれたときに感じる仕事の充実感や、1人ではできない仕事を、チームでやり遂げた時の達成感は何事にも代え難いものです。

◆大学生活とキャリア選択について
大学生活の軸は水泳部の活動で、競技はもちろん競技以外の面でも自分たちで話し合いながら部の運営をしていました。東京大学の学部時代はガスタービン、ジェットエンジンの燃焼に関する研究を行い、大学院時代は太陽電池の効率化に関する研究をしていました。基礎研究より生活につながりがある分野を学びたいと思っていましたので、多角的な視点から機械と向き合える、機械工学科を選びました。そして、身近で今発生している問題を解決するための、技術応用の視点での研究を、自分の中での職業選択の一つの軸として就職先を選びました。
航空会社を選んだ理由は、大学院のときには10人のグループで研究していましたが、日本人は自分1人だけ、修士の時代も、30代以上の留学生と一緒に研究をしていたので、自分なりの価値観や視野が広がりました。そして、日本だけでなく世界を股にかける企業を選ぼうと思いました。そして、自分が学んだことを、航空機に生かすことができ、航空機メーカーではないが、運用経験やお客様の声を通して、メーカーと共に、航空機に改良を加えることができ、ユーザーとしてお客様に近い目線でも仕事ができる。この「メーカー」と「ユーザー」という2つの視点から仕事ができる日本航空(JAL)を選びました。

最後に、皆さんに伝えたいこととして、目標を明確にしてほしい。そして、人との出会い、繋がりを大切にしてほしい。可能性を決めつけない。「楽しい」は最高の原動力。という4点を示します。特に、可能性を決めつけないでほしい理由として、私は高校時代、高3の夏まで部活を一生懸命やり、その後も塾に行きませんでした。自分がやりたいことをやって、勉強も本気で頑張れば、両方ともしっかりと結果を得ることができました。あれもこれも全部やりたいという気持ちを、簡単に諦めないでほしいです。1人でやっていることでも、他の人と話すことで、別の視点から考えることもできます。最後まであきらめずに、何でも前向きに取り組んで欲しいです。

◎「ゆるふわ」な選択をしてきた私から   外資系戦略コンサルティングファーム 川邊歩美さん(26期生)
 皆さんこんにちは。私の経歴は皆さんの手元にあると思いますが、一見、東京大学を卒業して、昔人気の国家公務員から、今人気のコンサルタントへの転職をして、華やかな「キラキラルート」を歩んでいるように見えるかもしれませんが、実はそれは違います。実際の私は、ミーハー的というか、「ゆるふわ」な選択をしてきました。
 改めまして、26期生の川邊歩美と言います。Gグループで、部活動はギター部でした。社会人10年目の昨年、結婚しました。
私のキャリアですが、渋幕を卒業して、東京大学文Ⅲから経済学部に進学、国家公務員試験(Ⅰ種)に合格して、警察庁に入庁しました。そこでの5年間の勤務を経て、現在のA.T.カーニー(戦略コンサルティング)という米国系の会社でマネージャーを勤めています。今日は、こうした私のキャリアの中にある、大学受験、就職、転職という3つのターニングポイントで考えたことを、皆さんにお話したいと思います。

◆警察庁とコンサルティングファームでの仕事
 まずは警察庁ですが、警察の政策(法)を立案するとともに、千葉県警察のような都道府県警察を、指揮監督する立場にある行政機関になります。研修期間には警察学校に通い、警視庁に派遣され、交番などに勤務しました。その後、本庁に戻り、いろいろな部署で仕事をしてきました。そこでの体験はオフレコです。(笑)
 次に入社した、戦略コンサルとは、いろいろな業界の、それぞれの会社ごとに、いろいろな課題や問題があって、それを一緒に考えて、道筋を示して、解決策をはかる仕事です。例えば会社には、百貨店や不動産、コンビニなど、いろいろな業種があります。私はその中で、製薬やキャラクターの会社を担当していました。会社の利益改善をどのようにして行えばいいのかという、会社のお医者さんのような企業で、今はマネージャーをしています。

◆私のキャリアモットー
私のキャリアモットーは、人生の選択肢を、何歳になっても、どのタイミングであっても、広く持ち続けたい、何にでもなれる自分でいたいということです。そのために、さきほど話した3つのターニングポイントで、どのように考えてきたということをお話しします。まずは「受験」です。正直、社会人になって思うのは、学部の選択は関係が無いと思っています。けれども大学の選択は、将来の可能性を広げる為に、とても重要だと思います。次に「新卒」です。このタイミングで、さすがに「ゆるふわ」な私でも、魂が震えるような、且つ、この年齢でしか経験できないような仕事とは何かを、真剣に考えました。私にとって警察庁がそれでした。

◆私の就職体験談
ここからは、私の体験談をお話しします。大学受験の時は、将来やりたい仕事が分からず、哲学や宗教にも、多少興味がありましたが、やはり学歴が大事とも考えてしまいました。さらに、大学3年生からの進路振り分けでは、経済学部にしておけば、外聞もよいし、就職も有利というミーハー的な選択をしてしまいました。でも今振り返ると、どの学部に行くかは、今私のいるビジネスの世界ではまったく関係がありません。それよりも東大に入ったことはよかったと思っています。就職活動には情報の非対称性があります。自分の優秀性をアピールできるのは履歴書しかないのです。
実際の私の就職活動ですが、動き出しは就職難易度や人気のある、外資系投資銀行やコンサルタントの、インターンシップに参加してみました。だけど全く面白くありませんでした。そこで悩んで、自分と向き合う様になりました。その時に、契機となった出来事に、東日本大震災がありました。津波で流されていく人々に対して、自分は何の力にもなれませんでした。子供の頃、「踊る大走査線」というテレビ番組を見て、警察官になりたいと思ったことを思い出し、人の安全や安心を守りたいと考えて、警察庁に入りました。ちなみに同期の8割は、東大の出身者でした。

◆私が転職した理由
 人の安全や安心を守りたいといって警察庁に入りましたが、その後、転職をしてしまいました。ただ仕事が嫌になったという、ネガティブな理由ではなく、ポジティブな転職をしました。その理由は、治安の向上という目的に対して、警察庁の取っている手段が唯一最善であるのかということ。外部や民間の手段を取り入れると、もっとよい社会になるのではないかと思いました。さらに、現状の霞が関の動き方が、どうしても効率的には思えませんでした。そして、もう一つの理由が、自分自身の可能性の拡大です。志を同じくする同僚と、同じことをだけをやっていても、相乗効果が生まれず、自分自身で、世の中を変えるインパクトが小さい気がしました。ですから、これに、ビジネスコンサルタントのような「民間のノウハウ」を掛け合わせることで、もっと「尖った個」になってやろうと思いました。

最後に、私のキャリアも、まだまだいろいろな可能性があると思いますし、とてもワクワクしています。皆さんの可能性は無限です。あまり真剣に考えすぎずに、今の自分のやりたいことを大事にしてもらいたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。

※全体会の終了後には、個別相談のスペースがカフェテリアに設けられ、多くの生徒の相談に対応いただきました。ご多忙の中、
後輩の為にと、来校いただいた4名の卒業生の皆様に、心より感謝を申し上げます。