6月12日(水)、本年度の進路部主催GLFCセミナーの皮切りとして、中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)さんの斡旋をいただき、「起業を考えてみないか!」をテーマに、起業セミナー2024を開催しました。今年は生徒たちの期待が高く約130名の生徒が参集しました。セミナーは最初に、千葉県を地盤に、活動されているPLUS-Yの代表取締役 永田洋子さん、続いて近年、経済産業省所管のJ-Startupにも選出され注目されている五常・アンド・カンパニー株式会社の経営企画部長 田中はる奈さんから、それぞれの視点から、テーマに関するお話をいただきました。以下、セミナーの内容を抜粋いたします。
◎ PLUS-Yの代表取締役 永田洋子さんのお話し
◆ 私の会社のミッション
PLUS-Yの永田洋子と申します。私の会社では女性消費者を対象とした商品・サービスの開発支援や、イベント企画・運営を行っております。女性の起業・創業の支援を通じて、女性が社会で活躍するステージづくりをサポートしています。私が起業を考えたきっかけは、地元の商店街での閉店が相次ぎ、シャッター街となってしまったことでした。もっと顧客の声を反映したい、そのためには女性の声を事業者に届けることで、売り上げUPに貢献したいと考えました。そして協力してくれた女性に報酬を提供するというシステムを構築しました。この経験から私の会社のミッションを「ひとり一人の女性が輝ける、自分らしく輝けるステージを創る」としました。ここで皆さんにクイズを出します。(Q1)男女平等度世界ランキングで日本は何位でしょうか?[正解125位] これは世界経済フォーラム参加の146カ国の中の順位です。日本のジャンダーギャップ指数も0.647と低い数値となっています。(Q2)日本の男女別賃金格差は何%でしょうか?[正解25%女性が低い]この50年くらいのデータを見てもこの男女の賃金格差は変わりません。特に差が開くのは30歳くらいからです。何故でしょうか?そうです!結婚、出産によって仕事が継続できないからです。(Q3)8.3%という数字は何を表していますか?[正解 日本の会社の女性社長の比率]日本はこの数値も世界的に見て低いです。ちなみに女性教員比率は8.3%、女性警察官は11%となっています。
皆さんには働き方の選択肢としての「起業」を知って欲しいと思っています。
◆ 起業とはなんだろう?
さて起業とはなんでしょうか? それは新たなビジネスを始めることです。社会には起業家と呼ばれる人がいます。そして本業の副業として個人事業主として起業する人もいます。起業家≠社長なのです。それでは起業家が取り組むビジネスとは何でしょうか?正解は「よりよい社会を作るための不の解消」です。不満・不足・不便など、「不」とは困りごとを表します。この「不」を解消することで新しいビジネスが生まれるのです。それでは起業は何歳からできるのでしょうか。年齢制限はありません。実際に小学生や高校生で起業家として活躍している人もいます。身の回りにある様々な「不」が起業の種になるのです。ここで起業家に向いているか否かの判断テストをします。次の[A]・[B]のどちらのタイプですか?[A]料理をするときに、何を料理するかを決めて買い出しにいく。[B]料理をするときに、冷蔵庫の中にあるもので考える。
[A]の行動パターンをコーゼーションと言います。目的を決めて、その実現のために逆算するタイプを言います。一方、Bの行動パターンをエフェクチュエーションと言います。手持ちの手段で何が出来るかを考えて行動するタイプを言います。起業家に向くのは、この[B]のタイプです。特にコロナ禍のような先のことが計算できない社会では、このエフェクチュエーションの能力が有用です。このロジックは、能力、知識、スキルが高い人が起業に成功するわけではなくて、自分の今持っているものを使って行動することにあります。小さな失敗などいくらでもあると開き直れる柔軟性も肝要です。そして失敗しても何度でも成功するまで頑張る粘りも必要です。最後に起業を志す人が増えると、ひとり一人の活躍の場が増え、経済が活性化します。皆さんのキャリア選択の1つとして起業を考えてみて下さい。
◎ 五常・アンド・カンパニー社 経営企画部長 田中はる奈さんからのお話し
◆ 五常・アンド・カンパニーの考えていること
私たちの会社は民間セクターの銀行です。今、渋谷幕張中高のパンフレットを拝見していて驚いたのですが、渋谷幕張中高の目指すところが、五常のビジョンと全く同じで驚きました。「誰もが自分の未来を決めることが出来る社会」の実現は、「自調自考」そして「自らの人生を描き、選択する」ということそのものだと思います。五常は、「金融包摂」、つまり金融サービスへのアクセスを有していない途上国の人々へ、有益かつ満足いただける金融サービスを提供しています。マイクロファイナンス機関(低所得者向けの小規模金融)に、スキルと資源を提供することでこれを実現しています。「金融包摂」は社会インフラの1つで基本的人権でもあります。本社に35名、グループ全体では約1万名の社員がおり、インド・ミャンマー・カンボジア・タジキスタン・スリランカで事業を行っていますが、こうした途上国の農村部の女性に少額の資金を提供して起業してもらい、収入を増やしてもらうシステムを運営しています。
◆ 起業家とはどんなイメージ?
私はもともと楽天という会社におり、いろいろな起業家と接してきました。皆さんは起業家というとどんなイメージを持たれますか? 起業家というと「野心的でギラギラしている!」なんてイメージがあるかもしれませんが、実際は、コツコツ真面目な哲学者、現実主義で気分屋の人、自己中だけど意志決定が超早い人、など様々なタイプの人がいます。ただ共通することは、人とは違う視点や世界観を持っていることや、魅力的で人を引き付けるところ、絶対に諦めない粘り強さを持っていることです。そして、人の話を聞かない、うっかりしているなど、必ず大きな欠点を抱えています。(笑)起業とは小さなことでもやり遂げる、その繰り返しです。楽天の三木谷さんは目標を達成することに強いこだわりを持っていました。それがGet things doneという楽天のカルチャーとなっています。そして、起業とは多様な人を集めて心に火をともすことです。五常の創業者の槙は、異なる考え方を持つメンバーと議論を重ねて、多様な意見を取り入れたことで会社の経営を軌道に乗せました。私も楽天時代に「楽天ソーシャルアクセラレータ」という、社会起業家に対して少額の資金を提供し半年間の伴走支援するプログラムを社内に立ち上げました。本業とは関係のないプロジェクトに、ボランティアで参加してくれる仲間探しと、スポンサー探しを行って、ワクワクする雰囲気づくりを心掛けながら活動を続けて、ついにプロジェクトを成功させました。リソースの無い状態から結果を出すためには、熱量をもって周り巻き込んでいくしかないことを学びました。最後に、皆が起業家に向いているのではありません。起業家は皆、弱点を持っています。その弱点を埋められるチームを作っていかないとうまくはいきません。どんな人でも自分なりのポジションを見つけて起業家と一緒に世界を変えていけるのです。
※ こうしてあっという間に、予定の2時間が過ぎていきました。個々のお話しの後には質疑応答の時間を設定いただきました。さらにセミナーの終了後にも個別の質問に対応をいただきました。本校生徒の為に大変有意義なお話をいただきました、永田洋子さんと田中はる奈さんに心より感謝申し上げます。重ねて本セミナーを斡旋いただいた中小機構さんにも御礼を申し上げます。