6月18日(火)、GLFCセミナーの一環として、日本経済新聞社の斡旋をいただき、金融経済セミナー(資産運用は日本を救う)を開催しました。そして、このセミナーのサブタイトルは「日本の未来を明るくする方法」。当日は、日本の未来を明るくしたいと考えている生徒128名が参加しました。本校の教員らも合わせると150名を超え、平日放課後に開催のセミナーとしては、過去最大規模の参加数になりました。セミナーの講師は、大和証券のエクイティ営業部副部長の森本裕貴さん。以下、セミナーの様子を紹介いたします。
◆ 自己紹介とメッセージ
私は金融・経済の情報を収集し、発信する仕事をしています。2006年に入社し、ニューヨークでの勤務を経て、近年は、日本全国に出張して講演会を行ったり、メディアにも出演したりすることがあります。ところで最近は投資への関心が高まっています。これが一過性のものか、長期的なトレンドなのか、これから皆さんと考えてみたいと思います。
◆ 日本人が備えるべきもの~インフレ~インフレがもたらす「正」の効果
2001年の消費者物価指数を100とするグラフを見ると、2020年末までは、世界と比較して、日本の物価は101と、ほとんど上がりませんでした。(米国は154、ドイツは134)日本だけデフレが続きました。ところが2001年からの3年間で指数は108に上昇しました。この原因は需要減・供給過多によるデフレ均衡から、コロナショックに端を発する、需要増・供給減を要因とするインフレ均衡への変化にありました。これからもインフレが続くかどうかのカギは「賃金」にあります。私はこれからも賃金は上がり続けると考えています。日本の生産年齢人口の将来の予想グラフ(2050年)を見ると、明らかに生産年齢人口は減少します。それは給料を上げないと人を雇えないことを意味します。さらに女性や高齢者の労働参加率は既に上昇しており、今後の上昇余地は限定的です。そして、これまで日本の低賃金を支えた中国に関しても、日本企業の国内回帰や中国自体の生産年齢人口の低下を理由に今後は望み薄です。物価が上がることには負と正の理論があります。負の理論は資産の価値が下がることです。逆に正の理論とは、物価上昇が企業の設備投資や賃金上昇のサイクルを回し、経済全体にポジティブな効果をもたらすことを言います。そして物価が上がれば株価が上がります。2008年から2024年の17年間でアメリカの物価は1.5倍になりましたが、株価は5.2倍になりました。資産は物価以上に上昇したのです。そして物価が上がると海外からの注目度が高まります。2012年から始まったアベノミクス相場は日本の物価が上がるという期待から、海外投資家の投資が増えたことで形成されました。皆さんが企業に投資をすることが、将来の日本経済の活性化に繋がるのです。
◆ 日本人が備えるべきもの~円安~ なぜ米国は強いのか?
今、円の実質的価値が過去50年で最低になっています。これは日米のiPhoneの2017年と2023年の価格の比較ですが、アメリカの価格が+14%なのに対して日本は+58%になっています。これから分かることはなんでしょうか。そうです、日本の円の価値が米ドルに対して44%下がったことを表しています。2019年には1ドル111.42円だったものが、2024年では157.80円になりました。これは近年、多くの外国人が日本に旅行に来る理由です。これからも、日本人が外国のサービス、例えばFacebookやGoogle、YouTubeなどを、多く使えば使うほど円安は続いていきます。日本では家計資産1,106兆円のうち、預金・現金が55%、株式・出資金の比率は15%程度しかありません。そして、円安がまずいと気づいた人は、少しずつ外貨に切り替えます。それがスパイラルして、さらに円安が進みます。それでは、どうすれば円安に対抗できるのでしょうか。その答えに繋がる言葉を挙げてみます。「DON’T PUT ALL YOUR EGGS IN ONE BASKET」。「卵を1つの籠に盛るな」、この場合は、円だけを持っていると危険が大きいという意味です。例えばアメリカドルを考えてみましょう。世界の為替市場の取引額のシェアはアメリカドルが40%を超えています。なぜアメリカドルを持っているとよいのでしょう。まずはアメリカ企業が強いことが挙げられます。アメリカ企業がなぜ強いかと言うと、アメリカ企業は、クラウドコンピューティングなどのイノベーション(技術革新)を起こすことに長け、世界の成長を取り込めるからです。AppleやMicrosoft 、Nvidiaなど、アメリカ外で利益をあげている企業が沢山あるのがその証拠です。このようなイノベーションの源が3つあり、1つ目として豊富な「研究開発費」があります。日本もこの14年で1.7倍になりましたが、アメリカは何と10倍です。そして、2つ目の源が、「起業文化」。積極的に先行投資を進めることで、企業の競争力が強化され、利益が増加するというスパイラルが伝統的に育まれています。ベンチャーへの投資額は日本円換算で32兆円と日本の100倍以上です。3つ目の源が「教育制度」。アメリカには世界大学ランキングの上位の優秀な大学が多くあり、それがうまく企業の実績に結び付いています。そして、アメリカの個人の資金力の強さがこれらの背景にあります。個人金融資産額は1999年からの24年間で4.2倍と大きく伸びました。人口も世界の減少傾向に反して、増加が予測されています。資源の生産量や食糧の自給率も高く、ウクライナ戦争でも、経済的なショックは他国に比べると限定的でした。
最後にアメリカの投資に関する文化を2つお話しします。1つは「投資家の文化」。資産の100-(マイナス)年齢分を株式に投じるのが適切とするルールがあります。もう1つは「経営者の文化」。例えばAppleやMeta、TESLAなどの経営者は現金で給与を受け取らず株式で受け取ります(ストックオプション)。彼らは、自社の株価を上げる熱意の高い経営者です。私のお話しは以上です。今日お話したかった一番のポイントは「あなたの投じたお金が日本を明るくする」ということです。これから先の日本のために渋谷幕張の皆さんには、是非先頭に立って活躍をしてもらいたいと願っています。少しでも今日のお話が役立てばうれしいです。ありがとうございました。
この後も,全体での質問に続いて、解散後の個別の質問にも丁寧に対応をいただきました。本セミナーの開催にご尽力賜りました日本経済新聞社、並びに大和証券株式会社、本日のセミナーの講師として本校生徒の為に刺激となる講演をいただきました大和証券株式会社 森本裕貴さんには心より感謝を申し上げます。