GLFCセミナー「宇宙に挑む医学~君も宇宙を目指せ!~」

11月28日(月)、Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA: 宇宙航空研究開発機構)より松本暁子先生をお招きして、GLFCセミナー「宇宙に挑む医学~君も宇宙を目指せ!~」を開催いたしました。松本先生はJAXAの有人宇宙技術部門のFlight Surgeon(宇宙医学の専門医)であり、東京医科歯科大学や徳島大学の大学院客員教授もお務めです。当日は40名を超える生徒が参集しました。以下、当日のセミナーの様子を紹介します。

国際宇宙ステーション(International Space Station, 以下ISS)は地上400kmの軌道を周回しています。ISS計画には、世界15か国が参加しており、船内実験室や船外プラットホーム、ロボットアームなど、日本も大きく貢献しています。
我々は、重力が当たり前の世界に生きています。しかし、宇宙は微小重力空間であり、宇宙放射線の被ばくもあります。宇宙という新しい環境にさらされることで、人体には様々な医学的影響が生じます。地上とは異なる環境の中で、人間の体がどうなるのか。これを究めるのが宇宙医学であり、私たちFlight Surgeon の仕事です。Flight Surgeon の具体的な仕事としては、宇宙ミッション関連の医学管理業務や、宇宙医学研究、国際調整などがあります。
JAXAの宇宙飛行士選抜では、より多くの方に宇宙飛行士に応募していただきたいということで、今回から応募資格が緩和されました。宇宙飛行士はISSなどに長期滞在することになります。これまでJAXAには11名の宇宙飛行士が在籍しました(現在は6名)。
アメリカのスペースシャトル計画は1981年から2011年にかけて行われました。私は日本人として最後にスペースシャトルに搭乗した山崎直子飛行士の専任医師(Crew Surgeon)を務めました。スペースシャトルが無事打ち上げられ、急いでテキサス州にあるNASAジョンソン宇宙センターに移動し、ミッションコントロールでの医学管理を実施しました。 
スペースシャトル引退後、宇宙飛行士はロシアのソユーズに搭乗してISSへ向かうことになりました。ソユーズはカプセルで帰還します。宇宙ミッションに向け、宇宙飛行士のサバイバルや潜水訓練などが行われ、私も医学サポートのため立ち会いました。2013年に私が若田光一飛行士の専任医師を務めた際は、ロシアのソチで翌年に冬期オリンピックの開催が予定されていて、ソユーズで聖火リレーのトーチがISSに運ばれました。
ISSでは、毎日体力トレーニングが必須です。そして宇宙飛行士の医学管理のために、専任医師が医学面談を行います。宇宙飛行士が宇宙から帰還する際は、着地する場所まで迎えに行きます。宇宙飛行士の医学管理では、通常の医療業務のような不健康な状態を健康に戻すのとは異なり、宇宙という特殊環境や訓練といった医学的リスクがある状況下で、健康を維持するためにリスク管理をしっかりと行うことが重要です。
宇宙では医学研究も行われます。人を対象とする医学研究で、最も大事とされていることは2つあります。それは、科学的合理性と倫理的妥当性という理念です。
そして、アルテミス計画が始まりました。月に人類の活動拠点をつくり、さらに月周回軌道上に有人拠点(Gateway)を建設する壮大な計画で、日本もこの計画に参加しています。
最後に、若くて優秀な皆さんには、ぜひ才能を生かし、地球人の代表として社会に貢献できることを考えてほしいと思います。



※ 松本先生のお話は壮大なスケールで、宇宙という未知の空間に挑戦をしていく宇宙飛行士や研究開発に携わる気概が伝わり、とてもワクワクする充実した時間を提供いただきました。本校からもいつの日か宇宙に飛び立つ卒業生が出てくることを期待したいと思います。ご多忙の中、本校生のためにセミナーを実施頂きました松本暁子先生に心より感謝を申し上げます。