第36回開校記念講演会

落語家の立川志の春氏(10期卒業生、1996年卒)を講師にお迎えして、38回目の開校記念講演会が開かれました。
志の春氏は本校を卒業後イェール大学に進学、三井物産に就職されてからふと立ち寄った立川志の輔独演会で志の輔師匠の芸に衝撃を受け落語家の道に転身された、という経歴をお持ちです。2020年4月に真打ちにご昇進され、お祝いの気持ちも込めてご講演をお願いしました。

秘密裏に先生方が田村記念講堂を寄席モードに演出されていて、緞帳が上がると、三階松と槐の紋様がデザインされた緑の後ろ幕、緋毛氈が架けられた高座台、紫の座布団、白木のめくり台が壇上に現れ、渋幕寄席の世界が一気に広がりました。

イェール大学に進学し米国人の友人から黒沢明や小津安二郎の映画の良さを逆に説明されたことで、自分が日本の文化や魅力をいかに知らないかを気づかされたこと、これをやらなければ一生後悔すると思い必死で親を説得して志の輔師匠の門を叩いたこと、落語の社会に求められるのはARTとSERVICEの中間であり、見習いの頃はとにもかくにも師匠を快適にすることを求められるがこれがお客様へのSERVICEの心構えにつながっていくこと、13回師匠から破門を申し付けられたがそのたびに詫びを入れて許しを請い蘇っていること、などを身振り手振りで話され、生徒は心地よく落語の世界に引き込まれていきました。

いつの間にか落語の「金明竹」が始まり、そしていつの間にか「転失気」が英語で始まり、気づけば講堂中の生徒は椅子からずり落ちていました。日本語の落語に続いて、英語落語がこんなに自然に鮮やかに受け入れられる空間があることに驚きました。

最後に「変わらないために変わりつづける」という演題に込められたご自身の強い意志をお話しいただき、渋幕生も新しい時代を切りひらいて欲しい、と励ましの言葉をいただきました。