進路講演会2024 Think Hybrid! ~異分野融合研究で拓くSFの世界~

11月19日(火)、中3~高2の生徒を対象に、東京大学大学院理工学研究科教授の竹内昌治先生を講師にお招きして、恒例の進路講演会を開催しました。当日は生徒約1100名、保護者約100名が聴講いたしました。以下講演の内容を紹介します。

Think Hybrid! ~異分野融合研究で拓くSFの世界~
私は高校生の頃、『ロボコップ』や『ターミネータ―』の様な、人間そっくりのロボットが活躍する映画が好きでした。大学では、生体と機械を融合する研究をやりたいと思いましたが、どこもそんな研究は行っていなかったので、自分で新しい研究分野を開拓しました。 私の研究室では、生き物とロボットを組み合わせたバイオハイブリッドロボットを開発しています。大学四年の時、初めて昆虫の脚と人工物をつなげて、電気信号を送り、昆虫の脚をまるで生きているかのように動かすことが出来ました。そして六年ほど前に、世界初で、筋肉で動くロボットフィンガーの製作に成功しました。

私たちが作ったバイオハイブリッドロボットの皮膚は、本物の人間の皮膚のように、自己修復能力を持たせることができます。生体整合性の高い、移植可能な臓器も出来れば、将来的にはロボットが臓器移植のためのドナーにもなれるかもしれません。他にも色々な可能性があります。 現在、創薬研究の分野では、マウスやサルなどを用いて動物実験を行っていますが、バイオハイブリッドで作り出した人間そっくりのモデルを使えば、こうした動物実験を行う必要はなくなります。 昆虫の嗅覚を利用して、災害現場でいち早く人を探し出すことも可能になるでしょう。ミツバチは爆発物や麻薬も嗅ぎ分けますし、蚊の触角には、人の汗や血の匂いを感知するスーパーセンサーがあります。スーパーセンサーとは細胞膜に埋まっている膜タンパク質のことです。鍵と鍵穴のように1種類の匂い分子に結合することで、膜に穴が開いて、細胞内にイオンが大量に流入します。それにより、たった一個の分子による信号を一千万倍に増幅して、僅かな匂い分子でも検出することができます。私の研究室で開発した、蚊の嗅覚受容体を持ったロボットは、人の僅かな汗の匂いを検出出来ます。 さらにその応用として、癌を匂いで早期発見する技術も開発しました。肝臓がんマーカーを含ませた呼気から、世界で初めてを検出することに成功したのです。
バイオハイブリッドを用いた食用の培養ステーキ肉の開発にも取り組んできました。培養肉ができれば、動物の命を奪わなくても済むようになります。
そしてついに、開発した培養肉を日本の大学で初めて試食することが叶いました。結果、不味くはなかったのですが、なぜか牛肉の味は一切しませんでした。現在は、牛の脂肪から培養した脂肪付きステーキ肉なども作製し、どのようにしたら味が生まれてくるのか調べています。
最後になりますが、皆さんが東大に入学されて、ご一緒に研究できるのを楽しみにしております。ご清聴有難うございました。

講演の内容はとても斬新な内容で本校生徒にとって有意義な時間を提供いただきました。
講演に続いて、本校卒業生(21期生)で、竹内研究室で助教をされている小田悠加さんからも、在校生に向けて、熱いメッセージを頂きました。