11月17日(土)「自調自考」を考える 第313号

 一日で、昼と夜の長さがぴったり同じになるのが春分と秋分。特に秋分では、農事としての意味合いを込め、豊作を祝い、感謝を捧げ、田の神を杞る儀式がこのころ。そして季節は、寒露、霜降と変わり、立冬となる。七十二候では、「山茶始めて開く」。山茶花の花が咲きはじめるころとなる。 山茶花の垣一重なり 法華寺 夏目漱石
 中国ではツバキ科の花を総じて山茶と云うらしく、山茶花の花が椿によく似ているため、候ではつばきと云うようだ。
 また盛大な「ハロウィーン」の季節でもある。ケルトの民俗行事から生まれたとされるキリスト教万聖節の前夜祭。子ども達にとっては「Trick or Treat」と菓子をねだって歩く楽しい時。今話題となっている渋谷でのハロウィーン騒動は大変顰蹙を買っている。「日本古来の村社会(お互い気心の知れた仲間集団)での祭りにあった『無礼講』が登場した」ように見え、異文化交流の悪い面が露呈した。ギリシャ語由来の言葉で「ディアスポラ」という言葉がある。「撒き散らされたもの」という意で、パレスチナから追い出されたユダヤ人及びそのコミュニティを指しているが、世界に撒き散らされたディアスポラは、人間にとって「文化的枠組み」は強力で簡単になくなるものでないことを示している。世界中に拡散されたユダヤ教のシナゴーグ(礼拝所)は初期キリスト教徒の教会の役割を果し、キリスト教普及に大きな貢献をしたことでもわかる。
 「文化」というものはグローバル社会においては多様に複雑に交流する。これから一層大切に且つ積極的に扱っていく必要があろう。
 日本文化の一つとして万葉集より一句  秋風のすゑ吹き靡く萩の花  ともに插頭さずあひか別れむ 因幡守大伴宿禰家持(四五一五)
 ところで、オリンピック・パラリンピックが二〇二〇年に開催される。その為全ての改革(例えば大学入試改革等)が、この年を目標として動いているように見えるが、国際社会では目標とされる年は二〇三〇年であることが多い。
 国連総会で二〇一五年九月に採択された「持続可能な開発目標」Sustainable Development Goals は、途上国の教育問題などだけでなく、地球環境や都市、雇用、格差問題の解決など先進国にも関係する広範な目標を立てた野心的なものとなっている。現在、具体的なテーマ十七項目を示し、二〇三〇年迄に成果を示すことになっている(国際的約束)。
 また経済協力開発機構(OECD、日本は中心メンバー)では二〇一五年からEducation 2030プロジェクトを進めてきている。二〇三〇年という近未来(十二年後)における子ども達に求められるコンピテンシー(Competency)能力を検討し、そのコンピテンシー育成につながるカリキュラムや教授法、学習評価などについて検討していくものである。最終報告を前にしてプロジェクトのポジションペーパーが公表された(本文は英語・仏語、日本語は仮訳)。中間的な概要報告と云える。
 現代の生徒が成長して世界を切り拓いていく為に必要な知識やスキル、態度及び価値は何か。学校や授業の仕組みがこれ等の知識やスキル、態度及び価値を効果的に育成していくことができるようにするためには、どうしたらよいか。
 これがこのプロジェクトが目的とする二つの大きな問いかけである。そして、「変革を起こす力のあるコンピテンシー」として、「生徒、教師、関係者のエージェンシー」が挙げられているのは、大変興味深い。例の「人工頭脳」にかかわって、校長講話で取り上げた「Sense of Agency」の「Agency」である。「当事者意識」とでもいうか。どうもこれが新しい教育改革でもKeywordになるようだ。
 自調自考生、どう考える。