11月18日(金)「自調自考」を考える 第295号

 秋分、寒露、霜降と続き季節は「立冬末候金盞香し」となる。金盞とは黄色い冠をいたゞく水仙の別名。水仙の花が咲き、芳しい香りが漂うころを意味する。
 「或る霜の朝水仙の作り花を格子門の外よりさし入れ置きし者の有けり」(樋口一葉『たけくらべ』)
 そして、今年も盛大な「ハロウィーン」の季節を迎えた。ケルトの民俗行事から生まれたとされるキリスト教万聖節の前夜祭。子供達にとって〝Trick or treat〟と菓子をねだって歩く楽しい時。英米発祥の行事だが近年日本でも。子供だけでなく大人の楽しい行事にもなっている。
 冬を迎えるこの時期に「小春日和」(Indian summer)=暖かな日射しに包まれた陽気の日=が来る時がある。この時に必ず次にやってくる厳しい冬の季節の準備をするものだ。
 咲く花は 移ろふ時あり あしひきの  山菅の根し 長くはありけり  時の花 いやめづらしも かくしこそ  見し明めめ 秋立つごとに 万葉集 大伴宿禰家持  北半球が冬を迎えるこの時期、地球社会では国連関連行事が一斉に動き出す。途上国対象十五年間の「国連ミレニアム開発目標」が終了し、いよいよ本年から始まる「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(17分野169項目)の実行初年。貧困や飢餓の撲滅、格差の解消、環境保護を含む野心的な計画の十五年行動がいよいよ始まる。
 ユネスコ(国連教育科学文化機関)も「京都祇園祭の山鉾行事」、「唐津くんち曳山行事」など18府県33件の祭りで構成する「山・鉾・屋台行事」を無形文化遺産(Intangible Cultural Heritage)として登録するよう勧告をした。「日本の地域文化の多様性と地域の絆の強化を示している」と登録基準を満たすと認められた。これまで日本からは能楽や歌舞伎、和食など22件が登録され、中国の30件に次ぎ二番目に多い。(二〇一六年十月時点)
 なおユネスコには歴史的建造物や自然環境を対象とする「世界遺産」、文書や絵画が対象の「世界の記憶」(世界記憶遺産)と「無形文化遺産」の三大遺産がある。
 ユネスコは世界遺産だけ仕事にしているわけでなく、教育、科学技術、文化、マスコミ等多くの重要な分野で世界的活動を支えているので、日本でユネスコ分担金問題が政治問題化している現状は大変心配である。なにしろ日本は分担金では米国が停止している現在、世界最大の分担国であるから。また「パリ協定」と云われる国連気候変動枠組み条約の締結、正式合意が大きな話題となっている。(我が国では十一月八日に批准)
 そして秋の国際的ニュースとして「ノーベル賞受賞者発表」があった。 二〇〇〇年~二〇一六年の十七年間では日本人受賞者は十七名となり米国に次ぐ二位の数となっている。日本中が明るくなったニュースであった。
 一方この文章が発表される時には米国大統領は決定しているであろうが、米トランプ候補の言動、英国EU離脱問題等グローバル化へ向かう世界の流れのなかで世界を揺るがす大きなニュース(ロシアのウクライナ・クリミア併合からはじまった)も飛びかっている。
 いよいよ先行の見通し困難という現在、学問を志している我々は自調自考をモットーに一層この道に励まねばなるまい。なぜなら私達は科学的思考と方法を身につけそれを駆使することによってのみ確かな未来へ働きかけることが出来ると考えるからである。因みに科学的思考と方法とは「仮説を立て実際に検証しその過程を数理的な手法で記述すること」である。そして付け加えるなら、その科学の進歩の原動力になるのは真理を発見したときの喜びと共にアドラーの云う共同体感覚(他者への貢献)の喜びであることを知ってほしい。
 自調自考生、どう考える。