6月15日(木)「自調自考」を考える 第301号

 平成二十九年五月立夏。小満、生命が次第に満ち満ち、日の光がかがやく季節。六月芒種、稲や麦など穂の出る植物を撒くこと。稲の穂先にある針のような突起を芒という。そして雨の季節。「梅雨」と呼ばれる雨が降り梅の実が黄色く熟し新緑もほぼ出揃い、雨に光る美しい緑が映える。 梅雨の月があって白い花 種田山頭火
 この「美しい自然のなかで、生きてあることの情感」は日本人の形成して来た伝統文化の特色として見事に色濃く表現されるものになる。民族最古の詩集と云われる『万葉集』にある約四五〇〇首もの膨大な歌にそれを強く感じる。
 日本(倭)が古代氏族制の社会から次第に天皇権を中心とする制度の整備に向かうはげしい変動の時代の約一二〇年間をかけて作られた『万葉集』は、その半分の歌が作者不詳。その時代の日本人そのものの情感が込められている。
 近現代に入って万葉の研究は盛んにされ正岡子規、島木赤彦等の優れた鑑賞、批評文が生まれている。加えて江戸時代元禄年間に生きた僧契沖の『万葉代匠記』、賀茂真淵(荷田学派)の『万葉考』は万葉集を知るには欠くことの出来ない貴重なものであることを知ってほしい。
 含めりし花の初めに来しわれや   散りなむのちに都へ行かむ 兵部使少輔大伴宿禰家持
 この時期学校では、一学期行事のいくつかを仕上げている。スポーツフェスティバル、中一野田研修、中二鎌倉研修等行事全てが生徒諸君自身の手で企画完成させ、達成感は強く、強い自己肯定感を育んでくれている。更には「科学の甲子園」等と云った国内の全国行事、そして世界を舞台とした「模擬国連」(開催地NY)、ワールドスカラーズカップ大会に参加し優秀な成績を挙げ士気いよいよ昂揚といった処である。
 学校外の地球社会では注目されていた仏大統領選が終了し、Brexit以来揺れていたEU選択に肯定の応答が出た。一八四八年から始まった仏大統領の歴史上最年少三十九歳のマクロン氏が選ばれ、世界中がホッとしたと云う処であろうか。
 十七世紀半ば(ウエストファリア条約一六四八)以降、人間社会の主導原理としての国家主権が確立され、統治が展開されて来た地球社会。そこで未来への夢の実現として構想されたヨーロッパ連合(EU)。国家主権を超える統治権の樹立。そのオリジナル6(仏・独・伊・ベネルックス三国)の中心国仏でEU脱退を決する大統領選挙が行われることとなるとは。まさに21世紀は何がおこるかわからない先行きの見通しのつかない時代と云われてきたが、実際こうした経験をすることはこれからを生きる青年達にとってはいよいよ本校の「自調自考」の重要さを感じてくれたのではないかと考えている。
 又宇宙・科学の世界の出来事として、二〇一七年今年から世界中の理科の教科書に「ニホニウム」が掲載された周期表が載るということがある。二〇一五年十二月三十一日、国際純正・応用化学連合(IUPAC)から「一一三番元素の発見者」として森田浩介九大教授が認定され新元素の命名権を与えられたことにより、提案された「ニホニウム」「Nh」という元素記号が決定した。(アジア初日本初)
 一方地質学では四十六億年に及ぶ地球の歴史は一一五の区分に分けられているが、その「更新世」(二五八万~一万年前)の三番目の時代を分析研究の成果により「千葉時代(チバニアン)」と呼ぶことが決まりそうだという話がある。そうなれば「現生人類ホモサピエンスはチバニアンに出現した」と云われることとなる。
 自調自考生、どう考える。