7月17日(火)「自調自考」を考える 第311号

 七月、文月、八月、葉月。
 江戸時代、日本の人々は、太陽暦(太陽のリズムを基準)と太陰暦(月のリズムを基準)を組み合わせた太陽太陰暦を使っていた。そして季節については、太陽暦の一年を四等分した春夏秋冬の他に二十四等分した二十四節気と、七十二等分した七十二候というこまやかな季節の移ろいが取り入れられ使われていた。
 学校は、一学期を終了し、夏休みに入る。二十四節気で云えば小暑、大暑、立秋、処暑となる。夏の土用は立秋前の十八日間のことで、土用入りのころ夏休みとなる。
 時候の言葉として「古代蓮」がある。水中の地下茎から茎を伸ばし、花を咲かせる。一九五一年千葉の落合遺跡で発見された蓮の実は、約二千年前の弥生時代のもので現代に花を咲かせ話題となった。本校中高校舎中庭にも、千葉県を北限とする「南洋蓮」がその妖艶な花を咲かせてくれている。夏休み入り直後、今年は本校主催の国際会議「ウォーターイズライフ(WIL)」がある。「水蓮」は英語で「ウォーターリリィ」。
 旬の行事としては「茅の輪くぐり」、夏越の祓もある。
 一学期には、スポーツフェスティバル、地区別保護者懇談会(前期報告書参照)、授業公開研究日、そしてメモリアルコンサート(高一保坂綾音、ピアノ協奏曲演奏)、中学生校外研修(野田、鎌倉)、高一歌舞伎鑑賞教室、高二オペラ鑑賞教室等、沢山の行事が終了した。
 いよいよ夏休みが始まる。
 「星めぐりの歌」宮沢賢治より   あかいめだまの さそり(アンタレス)   ひろげた鷲の つばさ
 ここで、生徒諸君は、毎日の生活の過ごし方の主導権を学校から取り戻し、一人一人が自分の持ち時間をどのように使うかを自由に決める夏休みに入る。毎日はほぼ十五時間余。期間は六週間。総計六百三十時間。この夏の過ごし方は、二学期以降さらにその先迄含め学校生活に大きな影響を齎すものであるから十分に自覚自重して、実りのある六週間にしてほしい。
 校長講話で触れたことで云えば、日本国の人口推計では、百年後の人口減(五千万という)に対しては一人一人の意識変革=イノベーションが不可欠であるということを思い起こしてほしい。オーストリアの経済学者シュンペーターが二十世紀前半に提起した概念、イノベーション(『経済発展の理論』一九二六年)とは、「モノやコトの価値ある新しい結びつき方」=新機軸=のことで、その結果旧来のつながりや慣行が壊される「創造的破壊」が起こることも指摘している。  この「創造的破壊」をおこすエネルギーは、既存の学問体系=中高校生ならば理系、文系といった種別に分類されたもの=を受け身の姿勢で学び、覚えるだけでは自分のものにならないものだ。今アクティブ・ラーニングの必要性が云われる理由はここにもあろう。夏休み期間の学び方はここにヒントがある。受け身の姿勢でなく積極的に学ぶことで学ぶ意味を発見し、自分のものにしてほしい。ここで米国で話題となっている『長寿と性格』を紹介しよう。この本の結論は、「勤勉性」が長寿となるカギであるということ。その為に必要なことが、「習慣」だと云っている。
 「習慣は第二の自然(モンテーニュ)」「努力によって得られる習慣だけが善である(カント)」そして「若いうちは何かになりたいという夢を持つのは素晴らしい。しかしもっと大切なこととしていかに生きるかということがある。日々の行いを選び積み重ねること、その努力こそが良い習慣を身につけさせ、人生の行方を決める。(串田孫一)」
 夏休みの時間、しっかり自分の時間のマネジメントしてください、自調自考生。