「自調自考」を考える 第341号

 二学期が終了する。短期間ではあるが、年の改まる冬期休暇。
 有効有益な計画を立てて、しっかりと過ごしてほしい。
 日本では冬を、初冬、仲冬、晩冬と三つに分けていた。今頃を仲冬、冬至初候、乃東生と呼び変化を楽しんでいた。
 冬至は一年で最も昼が短く、夜が長い。そしてこれから日が伸びていく。古代では、冬至が一年の始まりであった。年の始まりに体を清める禊の意味で柚子湯が楽しまれていたようである。そして、粥、南瓜、蒟蒻などを食べる習慣があった。

 初茜してふるさとのやすけさよ
木下夕爾

 秋を迎え、日本では急速にコロナ感染者の数が減った。ここ一年半私達を覆っていた緊迫感がかなり和らいでいるのが感ぜられる。
 学校でも、二学期の行事は順調に進行し、生徒諸君の顔付きも随分と明るくなったように感じることが多くなった。しかし世界全体では特に十月半ばからは感染者数は増加に転じている。一般に、システムの挙動は、関係する要素の数が増えるほど分析しにくくなり、「非線形的」という法則に支配されている場合は、予測は一層厄介になる。ウイルス感染拡大予測は、まさにこの厄介な難問の典型的部類になる。実際二十世紀初頭に世界的規模で起きた「スペイン風邪」(典型的ウイルスパンデミック)もある時期に急速に収束したがその正確な理由はいまだ不明なのだ。
 現在の処では、感染防止対策(ワクチン、マスク着用、密を避ける、換気等々)を工夫して実行して様子をみてみる以外に方法はなさそうである。良い冬休みになるよう祈っている。

 奥つ島荒磯の玉藻潮干満ち
  い隠れゆかば思ほえむかも

 み芳野の象山の際の木末には
  幾許も騒く鳥のこゑかも
万葉集巻六 山部宿禰赤人

 「自然」に感動している赤人の代表的秀歌である。

 ところで、前回ノーベル賞受賞で自然科学分野の三賞の物理学賞に真鍋淑郎プリンストン大学上級研究員が受賞されたことを紹介した。地球上で大気と海洋の関係を整理した計算式「大気海洋結合モデル」の開発が受賞理由である。
 地球上では必ず物理法則にのっとって現象がおこる。天気の変化や温暖化といった現象も全く同じで、計算式(物理法則)と大気のデータが手に入れば、確実に正確に変動を予測出来る。真鍋さんはこの計算式を発展させて、海が地球温暖化の原因となる二酸化炭素をどれくらい吸収できるかなどがわかるモデルを作ってくれた。
 実はこの数値予測の概念が提唱されたのは約百年前で、ノルウェーの気象学者ビヤークネスが最初である。「初期の正確な大気の状態(データ)と大気を変化させる物理法則(計算式)について十分正確な知識があれば合理的な天気予報ができる」というものだ。
 しかしこれが実現には百年かかった。現在の日本の気象庁が使う「全地球モデル」という計算式では、地球全体を二十キロメートル四方に区切って世界中で連携してゾンデ(気球)による観測(気温、湿度、風の向き)を定時に行い、上空三十キロメートル迄の得られたデータを基に計算式による計算で変化を予測している。この予測が実現出来たのはコンピュータによる計算が出来るようになってからである。米国でフォン・ノイマンが一九五〇年、米大陸上空の一日予報に成功した。
 現在国際連合で「持続可能な開発目標SDGs」として二〇三〇年実現を目指す十七の項目の一つとして地球温暖化対策としての気候変動を挙げている。温暖化対策の為には、この研究は必要不可欠の働きをしている。
 自調自考生、どう考える。