四月、卯月、清明、若葉萌え、花が咲き、鳥が舞い歌う。生命が輝く季節。旧暦では初候、春の使い玄鳥至。学校では、入学式が挙行され、始業式を迎える。
春風や闘志いだきて丘に立つ
高浜虚子
ユーラシア大陸を挟んで、東端と西端で温帯の日本と英国を比較すると、地形、風土の違いからか、動植物の種類の数は、圧倒的に日本が多い。その豊かな自然がこの時期、一斉に活動をはじめ、賑わうことになる。
欧米(キリスト教)では、キリストの復活を祝う日として、この時期イースターを祝い、日本では灌仏会として、浴仏盆の立像に甘茶を注いで釈尊の誕生を祝う。
日本最古、最大の歌集(二十巻約四千五百首)『万葉集』では、この時期の日本人の気持ちを鮮やかにうたう。
春の苑紅にほふ桃の花
下照る道に出で立つ娘子
春まけて物悲しきにさ夜更けて
羽振き鳴く鴫誰が田にか住む
天平勝宝二年春 大伴宿禰家持
春の豊かさを楽しむと同時に、春のもの悲しさをうたう日本文化の特色が窺える名歌である。
そして、今私達は「新しい自調自考生」を迎え、「青年即未来」、未来への誕生、出発の時である。
学校では新しい出会いがあり、対立ではなく、対話の素晴らしい機会が、あちこちで誕生している。
昨年、本学園は百周年記念行事を行った。その機会に私は沢山の本校卒業生諸君の進学先である大学の先生方と話し合う機会が持てた。
予想通りというか、予想していた以上に君達の先輩諸君の大学での評判が高いことに喫驚した。全ての方から、本校卒業生の発している校風が素晴らしいと言われた。私の卒業した大学の法学部の教授からは、具体的な例として、ゼミにおけるリーダーシップの発揮、明るく積極的に常に議論の先頭に立って活動してくれることなどを伺った。また工学部の教授からは、実験の際における「協働作業」「リーダーシップ」等においてのずぬけた活動ぶりを絶賛された。
これらの活動に、大学の先生方は本校の「校風」を感じると述べられていたことを紹介する。
人間が作る社会そしてその社会活動のなかから生まれてくるもの全てを私達は「文化」と呼んでいる。「文化」を発展させたものは「文明」と呼ばれる。学校という人間の一つの社会から、その活動を通して生まれ出来上がってくるものを、私達は「学校文化」=校風と呼んでいる。
私達の「自調自考」生の集う学校も、独特の「校風」を生み出している。そしてその「学校文化」には支え手が必要で、その支え手は、生徒諸君である。
生徒諸君が自主・自立を目指し、自調自考という目標をもって活動することによって、我々は、上質な、独特の個人主義が確立されたことが分かった。この個人主義は、利己主義とは異なる。他の人の個性や能力を最大限尊重する社会観によって支えられている。学園長講話でも取り上げている、夏目漱石の『私の個人主義』で話されている個人主義のことである。
本校の校風は、この上品な個人主義に加えて、異文化交流の齎す「進化論の概念」=ホロビオント効果が付け加わって出来上がっているものだと考えている。「ホロビオント」とは複数の生命体が共生関係を築き、一つの生命体を形成すると捉える概念である。文化においては「新しい調和」が生まれる際に使われる考え方である。「タタミーゼ」というフランス語がある。理屈をこねるのが好きなフランス人が畳の上で生活する(日本文化に触れる)ことで新しいフランス文化=理屈っぽいが、人にもよく気をつかう人に変わるという意味で使われる。異なる特色をもつ文化が交流することで、双方にとって調和がとれる新しい文化を生み出すのである。
今、時代は二〇四〇年、二〇五〇年と未来に向けての対応が真剣に議論されている。地球社会は、いよいよ地球規模での異文化交流の舞台となる。未来は与えられるものでなく作るものだ。この為に最も有用な働きを本校の作り上げてきた「校風」が果たすことを夢みている。
自調自考生、どう考える。
